参りました

先日からずっとようつべで『未来少年コナン』を見てきた。一日に一話から二話づつアップロードされていた。


昨日の夜に24話「ギガント」まで見たところでいてもたってもいられずに部屋の中をひっくり返し4,50分ほど探してようやくDVDを見つけ、最後の25話「インダストリアの最期」と26話「大団円」を見た。


もうね、たまらん。もう10回くらい見てる気がするけど、これは本当に素晴らしい。


全26話、まったく無駄がないというのがすごい。コナンとおじいのいた「残され島」と「ハイハーバー」と「インダストリア」(サルベージ船)を行ったり来たりするだけなんだけど、移動理由に無理がなく、流れるように話が進む。


着ている服がものすっごいシンプルでどうなの?手抜きか?と思うことはあるけど、まぁ人類が絶滅寸前までいったことだし、しょうがないとも解釈できるし、コナンやジムシーの超人的な能力も“それはズルいなぁ”と思うより、ギャグとして笑えるし、ラナのテレパシーも最後の最後、コナン捜索以外では決定的な能力にはなってないし。そのほか設定などではまったく手を抜いてない。細かいところがすごくいい。


「残され島」に突き刺さったロケットの先端から水がわき出ているところとか、ハイハーバーの生産サイクルの様子とか、はみ出した孤児の集団と大人たちの村との関係とか、サルベージ船による沈没船の引き上げの様子とか三角塔のデザイン、地下世界の住人、政治局員、委員会の爺さんたち。大津波で斜面たかく持ち上げられたバラクーダと再出発。太陽エネルギーを受け取る太陽塔(三枚のミラーが使われていないのがちと不満)。フライングマシンの情けない感じもいい。


もっというと、毎回オープニングで流れる宇宙船も好き。右に座っているおっさんの顔が気持ち悪いけど、どこがいいかというと爆発で飛んできた岩石(火山弾?)が機体に当たって穴があき、そこから煙がふわーっと流れ出すところ。飛び立ったギガントに乗り移るために飛行艇のファルコが砲塔に頭から突っ込むときの突入方法、ギガントの砲の誤射で起きた火災を消した緊急消火装置とそのときの炎が消えていく様子、青酸ガスを注入できるシステム。巨大なギガントそれ自身もいい(坊やの乗っていたガウってギガントそっくりだよね)。あの巨体なのにVTOLなんだぜ。1978年のアニメだからなぁ。製作者はかなり軍用機や軍用車両が好きと見える。


構成に展開に個々のシーンの出来(ストラテジー的に言うと、運動、ということになるか)、それらがすべていいというのは奇跡的な気がする。


哲也先生はサム・メンデスの『ロード・トゥ・パーディション』で


なぜ泣いているのか、自分でもよくわからなかったが、しばらくしてから、これはあまりにも美しいものを見ているから泣いているのだと気づいたのである。




と書かれてますが、僕は今回19話『大津波』を見ていて泣きそうになった。もちろん上にも書いたように絵はどちらかというとひどい(手を抜かざるを得ないスケジュールや予算だったんだろうけど)。それにお話だって、男の子は男の子らしく、女の子は女の子らしく、海の男は海の男らしく、博士は博士らしく、悪党はどこまでも悪党、といった感じで、ある種ステレオタイプのオンパレード(恥ずかしいな、オンパレードって)だし。


だから理由は「美しいから」ではない。なんというかあまりに出来が良いので涙ぐんでしまったとしか言えない。このあと、陸に上がったバラクーダが最後にコナンやインダストリアの人たちを載せて新しい世界(残され島だけど)旅立つことを知っていたからというのもあるけど、とにかく良く出来てるなぁと思ったとたんジンと来た。


宮崎駿(一部、高畑勲、早川啓二含む)はこの時すでに完成している気がする。というと本人は怒るかな。基本的なところは一緒に見える。ただ違う点があるとすれば制作にかけられるお金がケタ違いに増えたことくらいじゃないだろうか。一枚一枚の絵が贅沢になったと。まぁ、僕としてはそれで充分なわけですが。


映画なら『天空の城ラピュタ』、TVアニメなら『未来少年コナン』がベスト。よく考えられたアニメというと『攻殻機動隊』が思い浮かぶけど、個人的にはコナンのほうが上(名探偵のほうは論外ですよ、もちろん)。ハイハーバーのあたりを大幅に端折って、インダストリアに集中すれば映画(実写も含む)にできるかもしれないなぁ、と思ったけど、これを超えることはなさそうなので諦めます。