マネーボール 【Moneyball:2011】

見た。


マネーボール - オフィシャルサイト


“ブラッド・ピットの映画”という印象。


資金力の弱いオークランド・アスレチックスGMビリー・ビーンブラッド・ピットが演じる。彼がシーズン終了後にトレード交渉に行ったクリーブランド・インディアンズで選手評価を担当していたピーター・ブランド(ジョナ・ヒル)を気に入って引き抜き、彼の出塁率を重視する考え方を軸にチームを作り変えていくところがメインのお話。


この若いGM補佐はイェール大学の経済を卒業した変り種で、選手評価に関しても数値至上主義といってもいいほど数値しか見ないという彼のやり方とプロのスカウトたちに代表される従来のやり方=“野球人”の方法とがぶつかるところが面白い。というか、GMと若いGM補佐の二人VSその他全て、という構図のなかでそれを実現させていく様子が面白い。


ただ二人対その他全員という状況でいろいろと抵抗がありながらも突き進んでいけたのはやっぱりGMという立場の強さと仕事における役割がきっちり分かれていることをMGもスカウトもコーチも選手も各人自覚しているというアメリカっぽい性質があってこそ、という感じ。スカウトたちと揉め始めたかなり最初のころに、私たちはGMが決めたことにしたがって自分の仕事をするだけだ」という補聴器を付けた大ベテランの言葉が出てきたあたりでそれはしっかり示されている。


とはいってもやっぱり抵抗は激しく、フィリップ・シーモア・ホフマン演じる監督(正直彼を使うほどの役ではない。もったいない!)はいつまで経ってもGMたちが意図したような選手起用をしなかったり(結局手ごまを放出して監督の選択肢を無くすまで続いた)。


この映画の宣伝で『ソーシャル・ネットワーク』のスタッフが、みたいなのを見かけたし、実際似ているところはあった。けれどこちらのほうが好き。シンプルだし。『ソーシャル・ネットワーク』のほうは起業してすんごく儲かった、というところに興味があるというか理解のある人(アメリカンドリーム?が理解できる人)でないとそれほど楽しめないのではないかなという感じがしている。それに対して『マネーボール』のほうは同じポイントというのがチームが強くなって勝つ、というかなり誰にでも分かるところにあたるからだろうと思う。


まあ他にもキーワードを「出塁率」だけに絞ったり(実際はもっと複雑な数値を使っている)、改革前にもプレーオフに出てたじゃないか、とかあるけど、シンプルにしたのは良かった。


で、見終わってみると、ブラッド・ピットその人しか記憶に残っていないという。結局最初から最後まで一人で決断していく姿しか見ていないことに気がついたり(娘は例外かな)。ほかの役者でこの映画成立したかなー?と思うくらいのブラピ映画だった。


話の内容だけみると、弱小球団の快進撃という点では


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だったり、選手のマネジメント(ほとんどトレード)については





とかを連想するけど、どちらとも被っていない。快進撃の描写は個々の選手やプレーにスポットがあたることはなく、代理人についても言葉の上でしかでてこない。やっぱりこれはGMブラッド・ピットに焦点を絞った映画。


一番面白かったのはトレード期限の最終日(7月なのか9月なのか忘れた)にあちこちのチームに電話をかけて自分の欲しい選手を手に入れるシーン。目当ての選手をなかなか売ってくれないと分かった瞬間、競合するチームに自分のところからそこそこいい選手を売って資金を使わせた上で、もう一度電話して「他の買い手がまだ残っているかどうか確かめたほうがいい」と言う。このあたりは選手評価とはまた別に、経済活動、資産としての選手の売り買いが露骨で楽しかった。