宇宙戦争 【War of the worlds】

はい。ちょっと本気度が出てまいりました。


宇宙戦争 [DVD]

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映画館で見たものをもう一度借りて見るというのは珍しいのですが。


当時、大蟻食さんが『宇宙戦争』だけで単独のエントリーを書かれたときは、えー、そんな凄かったっけこれ?みたいな感想を持ったのは覚えておりますが、実際自分がどのように思っていたのかは覚えていません。ボォーーーーーーー・・・という法螺のようなサイレンとバシュッと音を立てて消滅する人々、燃える暴走特急とオチは覚えておりました。


最近ときどき思うのは、見た直後の感想とは別に、読んだり見たりしたあと時間が経っていても何かがお腹に残っている、そういう作品は結構当たりなのではないかということです。なんだかこう、あるシーンがくっきりと記憶に残っており、初見時、見ている最中、あるいは読んでいる最中に自分を包んでいた雰囲気のようなものがお腹のあたりにむむむっと沸き立つ、そういうものがいいのではなかろうかと。


ま、それは置いておいて。「顔」という話でしたが、確かに群集のシーンが多く、殆どの人が一度しか出てこない。ずっと映っているのはトム・クルーズの一家くらい。しかし、短い時間しか映っていなくても記憶に残る「顔」はあります。なにが違うのか。それはやはりこの映画にはいわゆるストーリーが無いということでしょう。メインのストーリーに絡む何がしかの台詞があれば、動きがあれば覚えていられるものですが、この映画はひたすら逃げる、流されるだけなので記憶に残りません。


大体主人公たちが今どこに居るのか、どういう状況なのかが最後までわかりません。とりあえず判っているのは子供たちの母親のいるボストンへ向かっているということだけです。他の映画であれば、一部生き残っているメディアによる報道があったり、かなり広範な情報を得られる立場=大統領にちかいところに主人公が居たりするので、そのへんは大丈夫なのです。


恐ろしいマシンが人間をころしまくっている(ハリウッドスターかどうかなど殆ど無関係に見えるほど突き放されたトム・クルーズ)、追い回されているということしかわからないまま、ボストンへ行ったところで安全の保障などまったく感じられない(まぁ観客はとりあえず2時間程度で終わることは知っているけど)状況が延々とつづく。実際郊外から見えたボストンは街中から黒煙が上がっている(でも皆そっちへむかうのね)。言われてみれば。そりゃいきなり電撃侵攻されたヨーロッパの田舎などはこんな感じだったのかもしれませんなと思いました。


燃える暴走列車のシーンは確かにはっとしたけれどもう少しながく見たかった。アングルなのか時間なのかちと足りない。兎も角、線路でつながっている遠い町も壊滅しているらしいということで絶望感たっぷりです。凄い。


あれ、まとまりが。まあいい。とりあえず気に掛かった点をば。


冒頭から光が過剰な感じ。人の輪郭がぼわぁっと光っているのは明らかにそうなるように撮影しているわけで、フェリーのシーンほか数箇所でも似たような光加減の場面が出てくる。なんというかタンポポの綿毛のような。ダコタ・ファニングが川を流れる死体を見るシーンではススキだかなんだかの綿のような穂がふわーっと横切る。人間側の光はいつもこんな感じで、人間を吹けば飛ぶような綿のようなものに見せている気がするけれどどうなんだろうか。


もう一つ。トライポッドについて「埋まっていた。だから昔から用意していたんだ」という意味の台詞が数回出てくる。最初は多分トム自身が言ってる。その後、同じことを他の人から聞くことになるけれど、そのときのトムの「顔」はほげぇとしてる。「確かにそうだろう、でも、だからなんなんだよ。なんにもかわらねぇよ。いみねぇよ。こいつらなに言ってんだよこんなときに。あ、俺も意味ないこと言ってたのか。」見たいな感じ。


もう一個。これは意味が判らない点。あの血をすったような赤い植物の根っこみたいなの。あれ、連中が持ち込んだ生物っぽいよねぇ。エイリアンが死んでいくあたりであれも枯れてしまうし。人間を消すだけでなくて、時折捕まえてミンチというのか液体肥料のようにして地表に散布して、あの植物を繁殖させたのはなぜ?なぜ?と思うけれどこれといった理由は示されない。判らないまま。結局なにもわからないまま殺されまくり、わからないまま収束する。ひでぇ。


ちょっと面白いと思ったのは、エイリアンがトライポッドから降りて、地下室に入ってきたところ。あそこでショットガン撃ったとして、連中はどんな反応をみせただろうかと言う点。その場で素手でやりあっただろうか。それとも吃驚して脱兎のごとくトライポッドに逃げ込んだだろうか。多分逃げたんじゃないのかなぁと思う。物凄い原始的で野蛮な動物に襲われる知能だけが発達したエイリアン。逃げるだろ。と。あの後頭部のヘリの下、裏側あたりに銃口を差し込んでドン!と撃つ場面が見たかった。もちろん一体殺して狂喜乱舞しているティム・ロビンスは、その直後にトライポッド数泰に執拗に追い回され殺されることになるけど。


えーっとなんだっけ。わ、わからん。兎に角、そうなぁ。面白いちゃ面白い。