ゴジラ 【Godzilla:2014】

素晴らしい映画だった。ほんとうに素晴らしい出来栄えだった。


冒頭の原子力発電所の崩壊、ハワイでの津波、そして破壊。空港のモノレールというカメラ位置が効果的だった。ラスベガスの破壊につづきサンフランシスコの破壊。特にサンフランシスコでは夜なのか昼なのか分からないほどの煙と埃で世界が一変したことが体感できる。


猪首のゴジラも良かったがもう一種類のモンスターであるムートの存在がとてもいい。昆虫的な前脚にヒトのような後ろ脚。巨大なメスに小さなオスの組み合わせもいかにも昆虫という設定だしオスだけ飛べるあたりもその印象を強化する。そしてそういう昆虫的な存在が一瞬見せる母性に意外なほど心が揺さぶられた。


ツイッターでも見かけたけれど炎に包まれながら走る列車はスピルバーグの『宇宙戦争』を思い出させた。そういえばムートはトライポッドのようでもあるし、ムートと米軍との戦闘の見せ方(山陰から戦火だけが見えるといった)も『宇宙戦争』のそれとよく似ていた(ムートだけ見ると『モンスターズ/地球外生命体』や『ミスト』、『クローバーフィールド/HAKAISHA』なんかと似ているけど)。


全体を通して人間の行為はいつもピントが外れていたり失敗したりしておりドラマはあるけれど見終わったときにはこの映画の主人公はやはりゴジラであったということがはっきり分かる。圧倒的な存在。一瞬だけど人間と倒れたゴジラの目が会う。あそこは『ヒックとドラゴン』のようだったけれど人間との意思疎通が可能であると思わせたのはそこだけでありやはりゴジラはヒトの味方であるようでそうではない(ゴジラが原因で死んだ人も多い)。その微妙な感じもまさにゴジラであってこれを作った人たちはよく理解していると思った。その辺りは1998年のエメリッヒ版『GODZILLA』(マシュー・ブロデリック主演の巨大イグアナ・ゴジラ)とは全く異なる。ムートの卵のシーンを見たとき、私は実はこのエメリッヒ版ゴジラのラストを思い出していた。今作ではあの似非ゴジラを焼き払ったようにも見えた。


ハワイの空港で旅客機が次々と爆発を起こすシーンや「hold your fire」とか「橋を撃つな」いわれているのに発射してしまったシーン、「バスは先に進め」と言われているのに伝わらないところなどいかにも人間がやってしまいそうなミス、起こりそうな不運な出来事が各所で見られたのも良かった。脚本がいい。


この映画は『ダークナイト』『ヒックとドラゴン』と並ぶ傑作だと思う。見終わったときの頭のなかの様子が似ている。熱がこもったような鼻息が熱いようなあれ。