遺恨あり 明治十三年 最後の仇討

先月2月26日の放送。今日見た。


感想を一言でいうと、
なんだこれ?


でございます。


まったく日本のテレビドラマっていうのは、ほんと、やったら出来るやん。やれば出来る子。


いや、正直びっくりしました。すごくよい出来だと思う。これ画面のトーンを全体的に少し暗めにして重めの質感を出して映画にすればかなりいい映画になると思った。


幕末から明治へ。御一新というあたりのお話で、その時代設定が良かったのかもしれないんだけど、ロケーション撮影がとてもいい。セットと思しきところも建物大道具はもちろん小道具衣装まで、とにかく画面に写りこむ部分隅々までちゃんと意識されて準備されているのがよくわかる(衣装がみんな新しい感じだったのは少し残念だけど、まあ時代的に洋装に変わったばかりの人が多かったんだということで自分を納得させた)。アスファルトの舗装がしてあるんだろうなと思うあたりはちゃんとぼかしてあったりするし、ここまでの凝りようは日本のTVドラマとしてはすごく珍しいのではないかと思う。


役者のほうもなかなか素晴らしい。主役である臼井を演じたのは藤原竜也で、ちょっと演りすぎじゃ・・・と思う瞬間もあったけれど良かった。山岡鉄舟を演じた北大路欣也も良かった。この二人の眼力が拮抗していたあたり、迫力があって良かった。バランスが悪いと下手をすると笑ってしまうようなシーンになっていた可能性があるけど、そうはなっていなかった。というところで藤原竜也やるね、と。


形見の脇差で仇討をしようとしている臼井=藤原に、山岡=北大路が剣術指南ではなく実戦形式で稽古をつけるシーンが素晴らしかった。殺陣がいい。二人とも、とくに藤原竜也は経験もなさそうだし、それほど鍛えているわけではない(剣を振るには腕とか細い)にもかかわらず、それなりに見えたし、北大路のほうといえば長いキャリア相応の立ち回りで、存在感ばっちり。この辺『十三人の刺客』の松方弘樹とは段違いだった。作品全体を比べてもこちらのほうがずっと上を行ってるけど。


で、この実戦形式の殺陣のシーン、一瞬道場の真上から二人を見下ろす画が映る。ここが素晴らしい。ふつうの竹刀(大刀)を構えた山岡と短い竹刀(脇差)を構えた臼井が向かい合っている。その圧倒的な間合いの違いが一枚の、それも一瞬の画で直観的にわかるようになっている。


話は変わるけど、昨日一昨日だったかフジテレビ系でやってた『SP 警視庁警備部警護課第四係』というのをちらっと見た。こっちはどうでもいい画をガンガン入れていて、しかもそれがテンポわるいというかリズムの悪い糞編集(『十三人の刺客』もバランス悪かった)で、見ていてむかついたんだけど、この『遺恨あり』はこれの正反対の出来。しかしあの『SP』ってのはほんと糞だね。内容が中二病という以上にそもそもいろんなところが下手だしギャグも中途半端でおもろないし。『24』みたいなのが作りたかったのかもしれないけど完全に失敗してるな。あれが映画にまでなるとかわらかしよんなーフジテレビ。


ふう。とにかく、このドラマ出来がよかった。もちろんやっぱり長すぎるだろ、という愁嘆場やちょっとしつこい音楽もあったけれど、我慢できる程度だし、ちょっと最近記憶にないくらい丁寧に作られたよいドラマだと思う。キャラクターも各自異なる立ち位置の人物が、それぞれ自身の信じるところに従って行動しているんだけど、破綻することなく個々人それぞれ整合性が取れているところも良かった(これ、当たり前といえば当たり前だけど、これ下手すると訳わからんゴチャゴチャな展開になって、そんな人間おらんだろということになりかねないし、そういうの多いもの)。


ふう。殺陣、というか擬斗という表記だったけど、指導したのは清家三彦という人。いい仕事だわ。あと監督は源孝志。こっちもいい仕事だわ。大道具も小道具も衣装も役者も良かった。


追記:途中から臼井六郎の妹が完全に消えてしまったのが謎だ。ま、小さなことだけど。