顔に降りかかる雨
これを読んだ。
- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1993/09/01
- メディア: ハードカバー
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パラパラとめくると、著者、桐野夏生さんの写真が現れた。服装と化粧の感じがとても古い。後ろのビルには「締め出そう暴力団は街の敵」とデカデカと書かれた垂れ幕。新宿歌舞伎町。締めだしても駄目だと思うんだ。絞め殺すくらいでないと。あるいは更生させないと。
別居中だった夫に死なれた未亡人、村野ミロが主人公。探偵をやめて北海道に隠居した父親のかわりに事務所跡に一人で住んでいる。ある日友人が失踪、金を持ち逃げされたとその愛人が訪ねてくる。
第39回江戸川乱歩賞受賞作ということだけど、それほど面白くはなかった。それもなにも江戸川乱歩賞なんて意識して読んだことはないんだけど。とにかくすらすら読める。さらさら読める。パラパラと進む。最近これほどまでに楽チンに読めた本はない。
この村野ミロものはシリーズらしいので、その設定紹介くらいに思っていればいいのかもしれない。あんま魅力ないんだけど。全学連崩れの団塊の描写も、かっこいいという前提らしいんだけど、どうもいまいちそのように見えない。古いから?なんともこっぱずかしい感じ。
タガログ語で姦しい隣室の女性たちやオカマの占い師あたりは街の風俗の描写ということなんだろうけど、実物の新宿を知らないわしとしては大沢在昌の新宿鮫とか馳星周の不夜城のほうがめちゃくちゃっぽくて好き。
この小説で一番よかったのは、ほとんど出番のなかったミロの父親(ミロってなんだか飲み物みたいだな、名前だけで書くと)。この父親が出てくるのなら続編を読んでもいいかなと思った。そんだけ、かな。