ホット・ファズ 【Hot Fuzz】

到着後ただちにトイレ(大)に入りかつらを装着。そのままカウンターへ行き「ホットファズ一般いちまい」と裏声でいいながら千円札を一枚だけ差し出す。入念にひげをあたってきたとはいえまるわかりではある。だがしかしかわいらしい切符の売り子は一瞬目を向いてえ?という顔をしたけれどそれ以上なにも言うことはできずお席はどのあたりにいたしましょうといいながら座席表を差し出してきた。やった!大成功である。


で安くなった分でポップコーンとジュースのセットLサイズを買っていそいそとエレベータに乗る。ポイントは決してひるまないこと。そして後ろを振り返らないこと。エレベータの中でかつらを外してリュックサックに放り込む。もぎりの係員は細かいところまで見ないので大丈夫である。


肝心の映画というと。えーと、まぁまぁおもしろかったです。悪くない。


成績優秀でいくつもの賞を受けて警察学校を卒業し、ロンドン市内に配属されたスーパーコップ、ニコラス・エンジェル巡査部長(サイモン・ペグ、ってデヴィッド・モースに似てるよね?ね?)が、そのあまりの検挙率の高さ(同僚比400%)ゆえにかえって煙たがられる(お前がいると俺たちが無能に見えるだろ?)ことになり田舎へと左遷される。


この左遷を言い渡す大ボスとして出てきたのがビル・ナイビル・ナイが登場しただけで一人爆笑してしまった。恥ずかしい。ほんとギャグもなんもないのに、ただ顔を見せただけでわろてしもた。『アレックス・ライダー』でMI6のボスとして出てきたときにも笑ってしまった。なんでだろう。あの顔としゃべり方が個人的につぼなんだろうか。


で、その田舎町で待ち受けていた相棒が署長のひとり息子ダニー・バターマン警部補(ニック・フロスト)。どこからどう見ても無能なこのバターマンとエンジェルがなぜかウマがあって結構いいコンビになる。というかどちらかというと警察映画、というかバディものが大好き、というかほとんどマニアであるダニーがロンドンで活躍していたほんもののスーパーコップであるニコラスに一方的に憧れてでっかいわんこのようになついてしまったといったほうが当たっているはず。


この映画、バカバカしくてとてもよかったんだけど、もーっとバカバカしい映画に徹していればよかったのになとすこし残念。なんかね、最後あたりがぐだぐだなのよ。蛇足というかなんというか。ま、悪くないんだけども。


田舎のおっさんおばはんおよび爺ぃ婆ぁが銃を乱射するってのはなかなかおもしろかった。特に“クソババア”が第二次大戦あたりでつかていたようなチェコ製くさい軽機関銃でズダダダダダダダと撃ちまくるのがダントツでかっこよかった。マガジンが真横に出てるのってなかなかいいよね。アメリカのギャングものでドラム状のマガジンぶら下げたマシンガンがでてくるけどあっちはどうしても笑ってしまう。


結構、おっと思ったのが犠牲者の死にざま。いろいろ見てきたけれどもなかなかの水準。血の飛び具合が北野武の『座頭一』っぽい。あの教会のやつが特にいい。素晴らしいと言ってもいい。大好き。


なのにだ。スーパーでの銃撃戦がしょぼい。なんでショーケースが割れないんだ?ナイフにどんだけ手こずってるんだよと。さっさと撃ちころせ!と。でもこの映画、犠牲者以外は殺されないんだよ。そこがすっきりしないのさ。惜しい。


そうそう。ティモシー・ダルトンがなかなかかっこよかった。最初顔をみたとき、あれ?どっかでみたことあるけどな、えーとどこだったっけ?あ、そうそう、こないだ見た『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』だ、ダニエル・デイ・ルイスだ、でもなんか違うぜ?でもすっげー見たことある…おっ007じゃん!


思い出すのに苦労したよ、ごめんよティモシー。でもティモシーの悪い顔がすごくよかった。悪役いっぱいやればいいのに。死んでないけどあの最後もよかったし。そういえば、あそこの殴り合いってウルトラマンみたいだなこりゃと思っていたんだけどあとで見ると監督がゴジラなんかの怪獣映画が好きで、そいつをやったらしい。やるな、エドガー・ライト。じゃぱにーず・ぴーす・りりー(Japanese peace lily)ってのもな。


ま、ティモシーよりもどじで間抜けでのろまなカメ(古いな)のようなダニーを演じたニック・フロストがよかったな。あれはなかなかいい。続編やってもいいとおもうけどな。今度はダニーがニコラスが戻ったロンドンに来るって設定で。よくある続編だろうけど、いいじゃん。この映画自体いろんな映画の焼き直しなんだし。