海岸沿いの崖下に立つ木造建築と崖から突き出た岩をくり抜いた建築と煉瓦と石づくりの3棟がつながった珍しい建物。その木造の2階部分が海に向かって開いていて、そこに布団がずらーっと敷き詰められていた。桟もなにもない縁側のような作りなのでそのまま砂浜にずり落ちそうな感覚になる。というか実際布団の空中に縁が飛び出している。自分がその気になればどさっと落ちる。


長い砂浜のずっと向こうを見ると冗談のような高い波、津波が押し寄せてくるのが見えた。一連の建築物はずいぶん高い崖に沿って建てられているが、その崖を大きく超える高さの津波。殆ど垂直に立っていて波頭は富嶽三十六景の神奈川沖浪裏のように巻いている。


ずっと遠くに見えるとはいえ今自分がいるあたりもそのうち危なくなると分かっていた。にもかかわらずその冗談のような垂直にそそり立った津波を見て「ああ、あれはゴジラ波だ」と思ってぼんやり眺めていた。波の姿がゴジラのように見えるからなのか、ゴジラが起こした波だからなのかは自分でも分からなかった。どちらでも正しい気がしていた。