ヒューゴの不思議な発明 【Hugo:2011】

見た。


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この映画の予告とスピルバーグの『タンタン』を混同していたことを思い出した。


予告を見たときに想像していたような超常的な何かは起こらなかった。ということで嫌な予感は外れ、見終わった時には満足していた。


火災で父を亡くした少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)は飲んだくれの伯父が時計の管理を仕事としていたモンパルナス駅に暮らしており、どこかに消えた飲んだくれの伯父の代わりに一人でいくつもある時計に油を刺しゼンマイを巻いていた。駅の中には保護者のいない子供をとっ捕まえては孤児院送りにしている恐ろしい公安官(青い制服がかっこいい)が戦争で痛めた足を引きずりながら巡回していたため壁の裏側の通路からタイミングを見計らいつつ駅の中の店からパンやミルクを盗んで暮らしていた。


それ以外の時間には、同じく駅の中のおもちゃ屋から盗んだ歯車やゼンマイを使って父の形見であるからくり人形を修理していたが、あまりにも何度も盗んできたために怒ったおもちゃ屋の店主に捕まってしまい人形の修理に必要なメモが書かれたノートを奪われてしまう。


で、このからくり人形の修理が終わったところでなにか超常現象でも起きるのか?と思っていたら起きなかったのでホッとした。これでいいのだ。


まあ駅の中、というか舞台裏というか壁の裏というか屋根裏というかそういう裏側だけで一人暮らしをしている少年というのがちょっと羨ましかった。子供の時に見ていればもっともっと羨ましがったはず。


おっさんになったいまでも私は商店街のアーケードの上で暮らしたいと思ってたりするくらいだから。店の人や行きかう客を見下ろし覗き見しつつ必要なものは店から拝借して(商店街なのでたいていのものは揃う)、日がな一日ごろごろして暮らしたいと夢みてたりする(ときどきほんとに夢に見る)。


とはいえ少年自身は大人におびえ一人でいることそのものに苦しんでいたりするので、ある日かわいい女の子(クロエ・グレース・モレッツ)に手を差し伸べてもらって最後には家族として迎えられる、というべたなハッピーエンドは見ていてほっとする。


ちょっとテンポ悪いな、と思わなくもないけど、駅をはじめとして居心地がよさそうな場所がきれいな映像で映し出されているとそれだけで満足できるので、これでいいのだ。


あと少年ヒューゴの話はつけたしであってほんとうのところはメリエス爺(ベン・キングズレー)さんの映画事始めというか草創期の様子が撮りたかったらしく、実際、全面ガラス張りの温室のようなスタジオとそこでの撮影風景というのは短かったけれどもかなり面白かった。


演技でいえばメリエス夫人(ヘレン・マックロリー)が目立たないながらかなりいい仕事をしているように見えた。


駅の中の本屋さんの役でクリストファー・リーが出ていた。見ると90歳だという。そりゃピーター・ジャクソンホビット』も急がなきゃならんね、と思った。


映画についての映画なのでさらっとではあるけれど古い映画の場面がいくつも挿入されていた。チャップリンバスター・キートン、『イントレランス』くらいは分かったけれど知らないものもたくさんあった。


そうそう蒸気機関車が停車できずに駅を突き破っていくシーンがあって、メリエスの映画のなかの同様のシーン(こちらはどこかの星の地表)を引用したものかと思っていたけど、実は実際モンパルナス駅で起こった事故を再現したものらしくその時の写真をみるとはっきりわかる。逆にメリエスがその事故を映画に取り入れていたのかもしれない。あの映画のタイトルが分からないので調べようがないけど。


メリエスの映画の人気が落ちたのは第一次世界大戦を経験し、厳しい現実を目の当たりにした若い人たちが、相変わらずのんきなお話を映し出す彼の映画に興味を失った、というようなことをメリエス自身に語らせるところがあったけど実際はどうなんだろう。本当なら第一次世界大戦によって表現(の受け入れられ方)が変わったということになるんだけども。