インビクタス 【Invictus:2009】

これを見た。


インビクタス‐負けざる者たち‐(音でます)


最初こちらを先に見る予定だったんだけど『ラブリーボーン』の内容があれなんで逆にした。正解でした。


こちらはなんというかもうクリント・イーストウッドって呼吸するように映画を撮ってるんじゃないかと陳腐にも程がある形容してみましたけど、そんな感じ。夢想剣を会得されましたかっ!でもいいお。


通俗的(ああ、いっちゃった)なすごくわかりやすいシーンもあるし露骨な説明的な画面もあるんだけど、殆ど気にならない。さらっとすましている。しつこく映さない。お前ら見ろ。見ればわかる。自分で考えろ。みたいな。しつこい演出がなくていい。


ワールドカップはリアルタイムで見てたので知ってるんだけど知らないほうが面白いかも。ただ南アフリカの国情というか内情は全然しらないまま、アパルトヘイトなくなってよかったねぇ、くらいの気持ちでしかなかったので、そのあたりは興味深く見ることができた。意外とさらっとしているようで根深い恨みや恐れがあるようでやっぱりさらっとしているようで、でも路上で倒れて頭から血がぴゅーっと吹き出してるニュース映像があったりで。


白人の象徴的なスポーツとしてラグビーがあり、黒人のスラムでは子供たちはサッカーをしている(
南アフリカサッカーワールドカップ開催したがってる理由も実はこの辺りにあるような気がした。)。ラグビーチームのユニフォームを着るとぼこぼこにされるくらい黒人からはラグビーが嫌われている。一方チーム唯一の黒人選手は少年たちにとってヒーローだったりする。うーむ。


アパルトヘイトが重要な前提にあるんだけど血なまぐさい描写がなく、アパルトヘイト後の奇跡のような成功が静かな視線で撮られていて、逆にクリント爺さんに『ホテルルワンダ』見たいな虐殺の映画を撮らせたらどんなのができるんだろうとか思ってしまった。


主役のモーガン・フリーマンがよかった。飄々と淡々と。歩き方もちょろちょろした感じで軽さがあっていい。ネルソン・マンデラをよく観察した結果何だろうと思うけど、モーガン爺さんが耄碌しただけのような気もして、まあ役柄に合っていればそれでもいいかと思った。耄碌した爺二人でちゃっちゃと映画量産するのも楽しくていいよ。


もう一人の主役マット・デイモンもよかった。立派なラガーマンになってた。どんだけプロテイン飲んだんだ死ぬぞ?と言うくらい筋肉モリモリになっていた。マット・デイモンもかなりすごいんだけど、周りのラガーマンが一回りも二回りもおおきいんだよこれが。相手チームもすごい。オールブラックスの掌底とかやられたら俺なら死ぬ。みんなでかい。スクラムなんて筋肉の塊だぜ。すげえ臭そう。


マット・デイモンあんなに鍛えたらこのあと痩せるの大変だろう、『恋するベーカリー』のアレック・ボールドウィンのデブっぷりもビビったけどあんな風になってしまわないかと心配になった。でも次の映画『グリーンゾーン』では最前線で特殊任務につく兵士の役らしいし、鍛えて損はしないんだろうけど。なりきりっぷりがすごいってのは悪くないし(しかし本編前の予告で『シャッター アイランド』と『インセプション』の二本に出ていたレオナルド・ディカプリオの区別が付かなかったのには驚いた。こんな役者だったっけ、ディカプリオって。交霊なりきり役者じゃなかったっけ?)。


さらに次の映画ではまたクリント・イーストウッド監督ということで、すこし期待していることがある。それはイーストウッドドン・シーゲルやレオーネ監督の映画に出ることでいい監督になったように、マット・デイモンも将来いい監督にならないかなーって。『グッド・ウィル・ハンティング』の脚本でアカデミー賞撮ってるくらいだし、可能性はけっこうあると思う。


同じ役者出身監督で、同じようになかなかよい仕事をしているメル・ギブソンのようにはなってほしくないけど。なんかこう暗いんだよね、メル・ギブソンの映画。気持悪い暗さを感じるから。