アロイシアスが出てくる、というのでこれを読んだ。というのは嘘だけど、読んだのは本当。


回想のブライズヘッド〈上〉 (岩波文庫)

回想のブライズヘッド〈上〉 (岩波文庫)

回想のブライズヘッド〈下〉 (岩波文庫)

回想のブライズヘッド〈下〉 (岩波文庫)




いやぁ、これはよかった。大変よかった。面白い、というのとは少し違う。


文章も美しい。翻訳もいいんだろう。見ると岩波版の小野寺健訳とちくま版の吉田健一訳がある。読んだのは岩波版。


駐屯地がブライヅヘッドに配置換えになった連隊の中隊長、チャールズ・ライダー大尉の回想として語り始められる。この回想という形式が上手く効いてるなと思った箇所がいくつかあった。が、忘れてしまった。


こういうタイプの小説を読んだのは久しぶりで、懐かしい気がしたけれど、これくらい綺麗なのを読んだ記憶がない。なんだろう。


前半のオックスフォードやブライヅヘッド、ヴェネツィアでのセバスチアンとの絡みもよかったけれど、後半のアメリカから帰国する客船でのジューリアや戦地から帰国してきたコーデリア
とのやりとりの辺りがすごくいい。超いい。コーデリアがセバスチアンの行く末を勝手に想像して喋りまくるところは流石にそれはひど過ぎると笑ってしまったけど。


セバスチアンがあのまま退場してしまったのは少し意外だった。まぁ髭がボウボウでガリガリの痩身なのはいいとして、さらに頭が薄くなっているセバスチアンというのは見たくないけどね。


最後に駐屯した兵隊たちによってブライヅヘッドがボロボロにされるあたり、なんというか腰が砕けるというか力が抜ける。ダニエル・クレイグが出ていた『バトルライン』でも兵隊のダメっぷりと男女関係のダメっぷりが描かれていたけどあのときも力が抜けてふにゃふにゃになったし。特に子供を引き取るところ。同じ人が書いたのだし当り前か。


怪我をしたセバスチアンに呼ばれてブライヅヘッドに行ったときに自ら車を運転して迎えに来たジューリアは『バルタザールの遍歴』のマグダを思い出させた。ほかにも、まあいろいろと連想したものがあったけど忘れてしまった。はぁ。


まあ、佐藤=セバスチアン=哲也だということがわかっただけでも良しとするか。確かに自己イメージは人間だった。ちょっとかわいそうな男だけど。ジェイムズ・ジョイスもミドルネーム?にaloysiusが入ってるけど読み方はアロイジアスって書いてあるね。どっちが本当なんだろう。