グラン・トリノ 【Gran Torino】 Jesus Christ!

もうねー、超よかった。もうねー、超クリント・イーストウッド!相棒が犬ってのもいい。


なにが好いってクリント爺ちゃん。最高。クリント爺ちゃんは今回、黄色(gook)だとか米喰い虫(rice-eating)だとかクロ(spook)だとか周囲のマイノリティたちを罵る卑語連発のくそ爺ミスター・コワルスキーの役。マイノリティとはいうけれど、周りの白人たちは皆死んだかどこかへ引っ越していて残っているのはコワルスキーくらいのもので、白人であるコワルスキーのほうがマイノリティになっている。そしてこの爺さんは妻を亡くし、一人フォードの組立工をやってきた古き良きアメリカを思い出しながら、自分が組み立てに関わった宝物である72年型のグラントリノを磨きつつ、建物も庭もボロボロなまま住み続ける連中を一人罵っている。

たしかに爺の家だけが綺麗なまま維持されていて、庭も毎日芝刈り機を転がして綺麗に刈っている。年寄りの自分にできるのになぜ連中はやらないのか。ポーチに座りビールを5本も6本も開け、ちらりとお隣のポーチに同じように座っている黄色い皺くちゃばあさんを見ては罵り、噛みタバコの唾を吐く。と、それを見ていたばあさんも同じように噛みタバコの唾を吐く。それもコワルスキー爺さんの数倍もありそうな大量の唾。

とはいえ、そばに住んでいるといろいろ関わりというものが出来てくるもので隣に住む米喰い虫の一家の娘と弟を通じて交流が始まる。ブツブツ文句を言ってはいても懐いてくる生意気な小娘がカワイイし、無愛想な弟も素直に大人になるための講義についてくるし、買い置きの切れたビールも飲ませてくれるし、料理はアジアに限る、ということで結構仲良くなっていく。


その後の物語はもう予想通りのべたな展開ですけれども、いいの。これは『許されざる者』からさらに年老いたクリント爺さんを鑑賞するための映画だから。もうね、ポーランド系のミスター・コワルスキーには見えないんだもん。どう見てもクリント爺さんその人。あるいはダーティー=ハリー・キャラハン(なんといっても最後のJesus Christが…)。年食ったハリーか?と思うようなヨタヨタしながらも素早く動こうとするクリント爺さんも見ることができて満足しました。キメ台詞もなかなかですよ。


Ever notice how you come across somebody once and a while you shouldn't have messed with, that's me.




話はベタだし特に派手なアクションもないんだけど、なんてことない場面がよい。暗闇で拳の血もそのままに座り込みタバコを吸うコワルスキーと神父。顔の半分が真っ暗闇な二人が対面するところは緊張感があってよかった(あとで風呂場で煙草を吸ったときに初めて家の中で吸うって言ったのは間違いだな)。ストーリー上も山場だし。


アメリカン・ビューティー』のポンティアックサンダーバードと違い、車庫から出て、青空の下を走っていくグラン・トリノはとても格好よかった。確かにあれは宝物だ。