晴れ


暖かい。

いつものようにバスに乗る。最後尾少し前、右側の窓際。いつもなら二人掛けの隣にはむさくるしいおっさんか加齢臭のひどいお年寄りかどうでもいいおばさんが座るところだが、今日は違った。

…女子高生が座った。…別にひどいブスというわけではない。ふつうの女子高生だった。こんなことがあるのだな。長く生きすぎた気持ちになった。それはそれとして、その女子高生は二人連れだった。一人は座れずに、隣に立ったままだった。

今日は朝からすっきりとした晴天で、朝日がまぶしかった。その朝日が窓から真っ直ぐに隣に座った女子高生にあたっていた。その子は盛んに「眩しい」と友達にいい、その友達は「お前がそんなところに座るから」(女子です一応)と返す。僕のところはカーテンが閉まっていたが、そこ子にあたる日差しを遮るためのカーテンは前の座席の窓についていた。そこ子は「お前、カーテン閉めてって言えよ」(一応、女子です)と友達に言っていたようで、何故窓から遠い友達にそんなことを言うのかおかしいと思って聞いていた。

あまりにもキャッキャキャッキャうるさいので、僕が腕を伸ばしてカーテンを閉めてやろうかと思い始めたころ、その理由が分かってきた。その立ったままの友達は、前に座っている男子高校生のうち窓際の子のことが好きらしく、「眩しい」と言っていた子は遠慮して自分では言わず、友達に言わせようとしていたらしい。「お前のために、自分では言わないんだから、早く言えよ」

ふむ。ここで僕が閉めてしまえば眩しくはなくなるが、二人の楽しそうなやり取りを終わらせてしまう。煩いが女子高生だしいいか。と思い、閉めずにいた。ところでその男子高校生はどんな男の子だろうかと、すぐ後ろから見てみたがよくわからない。ガラス越しに横顔を見ようとしてもよく見えない。その時、彼の左の耳だけにピアスが付いていることに気がついた。左だけ…

チッ。なんだこいつは。ケッ、死ねばいいのに。大体、眩しいという声は相当大きいのだし、もっと言えば二人が自分のことでキャアキャア言っていることくらいわかっているはずなのだが、カーテンを閉めやがらん。カスめ!

とも思ったのだが、ひょっとしたらこいつ、女子に「閉めて」と声をかけられるのを待ってるんじゃないのか?と思うと、やれやれ、高校生なんてのは男も女も子供だったな、そういや、という心もちになり、いつもよりも少しだけ明るく楽しい朝になった。

年くったな、はあ。