第十七捕虜収容所 【Stalag 17】

これを見た。


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第二次世界大戦、ナチの捕虜となった米兵が集められた捕虜収容所のお話。収容所内で捕虜はもちろんドイツ兵ともうまく取引をし、ネズミで競馬(!)を開催したり、手作りの望遠鏡でロシア人女囚のシラミ駆除の様子を二十秒たばこ一本で覗かせたりした結果、千本単位の煙草やお酒、カメラや鳩時計まで貯め込んだニヒルなセフトン軍曹(ウィリアム・ホールデン)が主人公。


ある夜、同じバラックの捕虜二人が脱走を試みるが、収容所を出たところで待ち伏せにあって殺される。脱走の失敗にただ一人タバコを掛け、大勝ちしたセフトンは、その後、捕虜仲間で隠して回し聞きしていたラジオの没収などの摘発によって、ドイツ側のスパイの疑いをかけられ、リンチを受ける。


本当のスパイを探し出してその疑いを晴らし、最後には脱出に成功するというハッピーエンド。


すごくサンテレビ臭がするので、ひょっとしたら大昔にサンテレビで見ていたかもしれない。電球の結び目のあたりは見た記憶がある。サンテレビ臭がした、とはいえ悪くはない。見ると、つい最近、古くてもちゃんと楽しめる映画があると気付かせてくれた『サンセット大通り』のビリー・ワイルダー監督じゃないか。うむ。


しかし、ですよ。これはあまりにも軽い。コメディと言ってもいい。確かに冒頭に脱出しようとして失敗した二人は殺されるが、それ以外は死のにおいが全くしない。病の存在さえ感じられない。


映画が始まってすぐ、収容所内でセフトンの助手を、たばこ五本の報酬で、していたクッキーのナレーションに「戦争映画はたくさんあるが、捕虜の映画はない」というセリフがあった。だから語ろうと。


この話が本当なら、1957年の『戦場にかける橋』はきっとこの映画を見て頭にきた太平洋戦線の退役軍人が作ったに違いない。ヨーロッパ組の捕虜生活はちょっとひもじいバケーションじゃん、いいねえ。みたいな。感じで。


私物をいろいろ所有しているし、タバコも酒もあるし、ゲームもできる。バレーボールだってできる。重労働を強制されている様子もない。ただ、食事が質素なだけ。典型的な凸凹コメディコンビが出てきて、それなりに楽しいんだけど、これじゃダメだろという気持ちがどうしても抜けない。どうせなら完全なコメディにするべきだったと思う。


ところで、この凸凹コンビのアニマル&ハリーのうち大きい熊のようなアニマルを演じたRobert Straussベニチオ・デル・トロに似ているし、ちっさいほうのHarvey Lembeckダスティン・ホフマンに似ている。ダスティン・ホフマンよりも『オーシャンズ11』で電気屋をやってるEddie Jemisonのほうがよく似てるか。あとすぐカッとしてセフトンをぶっ殺すと暴れては止められていたやつはゲバラにそっくりだった。


そういえば、バラックの中で密談をしていたところへドイツ人が入ってきた瞬間、椅子に座ってた連中がみんな口笛を吹きだしたのには驚いた。スットボケているという描写らしいけど、お約束にもほどがある。萎えたなあそこで。