キングダム/見えざる敵 【The Kingdom】

これを見た。


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いやぁ、これは面白い。冒頭サウディアラビアの成立についてものすごい速さで、えっ?と思うようなお話が流れる。へぇと思っている間にサウジアラビアの油田で働いているアメリカ人の居住区で、サウジアラビアの警官の制服を着た連中によってドダダダダダと乱射。テロリストたちは正規の警官たちとカーチェイスの上、射殺される。一方住宅地での銃声を聞いてパニックを起こしたソフトボール大会の参加者たち(子供も大勢いる)をこちらが安全だと誘導していたデブ警官もまたテロリストであって、自爆する。


多数の犠牲者を出した現場は夜になっても遺体や怪我人が収容しきれず、救急車や消防車、警官などであふれかえっており、その中にはFBIの捜査官もいた。捜査官が血にまみれた小さな野球帽を握りしめながらなんてひどいことを、などとつぶやいているとその背後で昼間の自爆テロとは比べ物にならないほどの大規模な爆発が起こり、その場にいた人間はもちろん各種車両まで、すべてが吹き飛ばされる。


ということで、自国民を未曾有のテロで多数失ったアメリカはブチ切れるのか?と思いきや、アメリカ人がサウジアラビアにいたからこそ起こったテロであるので、さらにそこへアメリカ人捜査官を派遣することはアメリカ人中東で最重要である同盟国サウジアラビアとの関係を悪化させかねないとという理由から、復讐に燃えるFBI捜査官の派遣はしないと決める。が、主人公であるロナルド・フルーリーFBI捜査官(ジェイミー・フォックス)は在米大使館のえらい王子様(ひげおやじ)をゆすって現地サウジアラビアでの10日弱の捜査を強引に勝ち取る。


捜査チームには爆発物の専門家としてクリス・クーパーが出ていて、同じくジェイミー・フォックスと共演していた『ジャーヘッド』を思い出した。このおっちゃんが文字通り泥にまみれながらなかなか渋い仕事をする。仕事をするといっても捜査官を狙ったテロを防ぐために事実上閉じ込められたお客様扱いを受けていたので王子様に気に入られて実際上の捜査ができるようになってから、の話だけど。女性捜査官の専門は検視のようだったけれども、女性ということもあっていろいろと制約が多く、あまり仕事はできなかったけれど、後々ものすごく働く。アメリカ女を怒らせるのは絶対やめなければならん、と心に刻み込むことになった。


もう一人の、くだらないジョークばかり言っていたお調子者の捜査官は、なんというかもうほんとうに邪魔なだけ。ベッドにねころがって犯行声明を出していたウェブサイトを見つけただけ。どれくらい役に立っていなかったかというと『アルマゲドン』のスティーブ・ブシェミくらい。


後半、テロリストに襲われるんだけども、細かいことは置いておいてとにかく敵を倒して仲間を助け出さなければ!という単純な目的に向かう捜査チームの問答無用な感じの戦闘シーンはかなり心地いい。アクションだけじゃなく、全体にも言えるけれどテンポが素晴らしく早い。


で、最後。ここが少し困った。困ったというのはこの終わり方が特別悪いのではなく、これ以外にどうだったらよかったのか?と考えてもほかにないのでしょうがないんだけど、なんだかうぐぐと考え込んでしまった。アメリカ人が死ぬよりはよかった、のかもしれない。


ところでサウジアラビアの王族ってのはほんと凄まじいってことがよくわかった。あと建国してから日が浅く、結構不安定な感じもする。あの様子がほんものならば近いうちに革命が起こりそうなんだけど、どう考えてもそれは共産革命ではなく、イスラム革命であって、サウジアラビアでこいつが実現したらと思うとかなり息苦しくなる。トルコなんかも瀬戸際っぽいし、あの辺一帯が一色に染まり、イスラエルが明確に孤立したとしたら、世界の終りが顔をのぞかせるんじゃないかと。こえぇ。なんつうところへ行くんだユウ様。