晴れ


快晴。そとは暖かい。ということで部屋は暑い。

夜中に目がさめ、どうしてもジュースが飲みたくなったので自販機目指して外へ出た。古い住宅地だけど結構街灯が少ない。家の前の通りのずーっと向こうに酒屋の自販機の明かりが見える。そっちへ向かってとことこ歩いて行くとなんだか変な臭いがしてきた。

次の瞬間、心臓が止まるかと思うほど驚いた。真っ暗な通りに巨大なブタが横たわっていた。大きいブタではない。巨大なブタだった。どれくらい大きいかというと少し斜めに横たわった体は通りをふさいでしまうほどの大きさで体長は7、8メートルはあるし、胴も直径1メートルはある。じっと見ていると目が慣れてきて、ところどころ黒ずんだ段々のついた腹と脇腹あたりに生えた黒くて太い毛、剛毛が見えてきた。どうもなまっちろい肌をした家畜の豚とは違うよう。というか大きさが異常。ほとんど砂浜に打ち上げられたクジラのようだった。

で、その巨大なブタは死んでいるようで、これはとにかく警察に連絡しないと車が通り始めたら事故ると思いついでに写真も撮ろうと携帯電話を取ろうとして、ポケットに入ってないことに気がついた。いつもかかってこないしかけないので持って歩かないのだった。

で、すぐ近くなので部屋まで取りに帰ろうとしたその時、ブタの脇の暗がりに人が数人いるのに気がついた。その連中はじっと黙ったまま僕を見ていた。みんな揃いの作業着を着ているので、たまたま通りがかった僕とは違うようで、というかはっきり言ってこのブタのことをよく知っているようだった。なんか、黙って睨まれているので怖くなった。というか怖すぎて足が動かなくなった。そのまま三十秒ほど突っ立っていたら、その作業着の男たちがなにやら動き出した。マグライトのような懐中電灯の明かりをぐっと絞って、足元だけを照らしながら動いている。その明かりがブタ以外の何かを照らした。よく見ると鹿の死体だった。それも一杯転がっている。ほとんどがまるくて小さい小鹿だった。ずっと奥のほうを見ると母鹿らしい大人の鹿がたくさんいた。数頭は隣に小鹿がいる。一頭の母鹿はふらついていた。

どうも巨大なブタに殺されたみたいだった。さっきの変な臭いはたくさんの死体のにおいだった。母鹿の光った目が一斉にこちらを向いた。気持ち悪かった。

そこで目が覚めた。

いい連休の始まりだ。