スパルタカス 【SPARTCUS】

七生たんのご本で出てきたので見てみた。




始まったなぁと思ってから4分から5分ほど、ただひたすらに音楽が流れていたのでひょっとして二枚組みの二枚目から見たのかと思って確認してしまった。見直してみると「Overture」とあり序曲だと。なんつう大仰な。


と、出だしで躓いたので少々イラつきながらも見はじめると、なにやら見たことのある顔が出てきた。奴隷を買い付けて剣闘士として育て上げ、売り払う商人が『クォ・ヴァディス』でネロをやっていたピーター・ユスティノフだった。そうか、あの顔はいやなローマ人の典型的な顔なんだな、ハリウッドでは。今回はネロほど酷いヤツではなかったけど、思わず笑った。じわじわ来る面白い顔だ。


映画の内容としてはスパルタカスの反乱の始まりから終わりまでを3時間以上かけて撮り尽くしたというもの。いやぁ、ほんとに大作だった。まんなかあたりで昔懐かしい休憩時間があったから大作というわけではありません。とにかく人が多い。物凄く多い。中国人ならいざ知らず、ハリウッドであれだけの人数を集めたというのは凄い。馬が少なかったのは仕方ないけど、老人や女性、子供まで一緒に引き連れて移動する奴隷軍の様子にはどきどきした。女性も老人も兵士として戦うんだな。黄巾の乱とか思い出した。


で、だ。やっぱり奴隷ってのはつらいんだろうなと、あたり前のことだけど、思いなおした次第。だってさ、七生たんの書くローマってとにかくイイ!の一点張りだし、ずっとそういうものを読んでいるとなんとなく“ほぅ、ローマだと奴隷といっても悪くないな、自由な身分になることもあるんだし”などと思ってしまうのだ。だけどやっぱりやだよな、奴隷。ガリアだって同じだろう。軍隊がどかっと現れて、とにかく人質をよこせ、などと言ってくるんだから敵に決まっているじゃないか。ローマ化してやんよ、といわれてもほっとけ!と言いたくなるわな。どんだけ中華思想なんだよ、とか思ったが、現代のアメリカだって同じようなもんだわ。昨日もNHKで「イラク戦争」って普通に言ってたけど、ありゃめちゃくちゃな侵略戦争だぜ。だって大量破壊兵器なんてなかったんだし。いくらフセインが酷かったとはいえ、大義もクソもないわ。


失礼。影響されやすいのです。端から端までびゅーーんと振れるのは結構気持ちいいのです。ごめんなさい。


で、全体としては悪くなかったんだけども、やっぱりそこは古い映画。スケールの大きなロケで、壮大なシーンもいっぱいあるけれど、ひと目でこれはセットだわ、植物もどこか萎れてるっぽいし、歩く音も変だし、というシーンも多数。すこし残念。あと、蜂起したスパルタカス達に各地で働かされていた奴隷が合流したりするんだけども、画面の向こうの方から諸手を上げてうわぁーって叫びながら走ってくるシーンがあって、その様子があまりにも投げやりだったので笑ってしまった。


ということで、重い話ではあるけれど、ところどころ笑える(製作者が意図したものではないだろうけど)ので土曜の昼下がりあたりにぼんやり見るには丁度いい映画ではないかと思います。


カーク・ダグラスアゴがすっげぇ気になった。最後まで。