モンゴル 【MONGOL】

予告でみた殺陣がなかなかよさそうに見えたので、見てきた。



MONGOL


うむ。これはえかった。とにかく、馬、馬、馬、馬、馬。どこっどこっどこっどこっという低くて重い蹄の音がいい。


モンゴル人らしい連中の馬の乗り方がすごくいい。上半身をすこし開き気味に、「はぁ、しんどいなぁ馬乗るのん」みたいに余裕をかました感じで、手綱と一緒に握ったムチを、しゃなりしゃなりと左右に軽く振るだけで自由自在に駆け回る。人馬一体とはあのことか。


なんかこう脚が太いの。モンゴルの馬。「嫁にするには脚の頑丈な女がいい、男を幸せにしてくれる」と、嫁選びにでかけた9歳のテムジンに向かってハーンである父親が言ってたけど、馬も脚の頑丈なのがいいに決まっている。嫁も馬と同じくらい大事なもんだ、ということだろうか。


いやいやそこのお嬢さんがた、怒っちゃやーよ。モンゴルにおける馬というのはもう、欠かす事ができない、最重要の財産なのですよ。嫁はなくとも馬は要る。あの大草原で活きるには馬が要るのです。なのに。テムジンは父を失って以来ずっと馬なしで過ごすのです。これだけで泣ける。靴がないようなもんだもん。はだしで逃げ回るんだもん。


当然捕まってしまう。捕まって首と両手に枷をはめられる。逃げる。でもやっぱり馬がないので捕まってしまう。で、またまた枷をはめられる。あの偉大なチンギス・ハーンがずっと馬が無くて、いつも逃げ回っていて、そんでいつも捕まって、最後には奴隷として売られたりするなんて、予想外。というか知らなかった。というか史実かどうかも知らない。


で、戦闘シーン。これはまぁね、まあまあ。兎に角逃げてばかりでちゃんとした戦がなかなか出てこないんだけども、嫁を取り戻すために盟友(あの、ほれ、互いの血を混ぜた乳を飲み交わすやつ)と一緒になにやら怪しげな部族を襲うシーン。なかなかいい。じゃりっじゃりっというとても不快な、人体を斬る音。噴出す血。そしてドライな人死に。最後の戦いに出てきた謎の黒馬集団はモスリムというかアラブなんだろうか。種明かしがなかった。なかなか格好いいんだな、あれ。雷はやりすぎだけど。


どうも、この映画に出てくるモンゴルというのは部族間での殺戮と略奪が当然のように行なわれていて、唯一の掟らしい女子供は殺さない、というキマリさえ無視されがちになっているという世紀末状態。掟を重んじて頑張ってきた父ハーンも掟破りな方法で殺される。ということで、戦闘が日常業務のようになっているので、ドライになるのは仕方がない。


映画は盟友との対決を制し、モンゴル国内を統一したところで終わる。いや、ちょっとまって。その民族を挙げてドライな殺戮集団になった君たちが世界中を席巻するところが見たいのに。ヨーロッパがぐずぐずになますにされるところが見たいのに。と思っていたら続編も撮るらしい。もう、がんがん切り刻んじゃってください。スカッとしたいの。


あ、でも元寇はお手柔らかに。ね、冒頭いきなり1192年てテロップがでるの。なんで、ああ、鎌倉幕府か(古い?)と。あの連中を相手に善戦したのであれば大したものです、鎌倉武士。