ドッグ・バイト・ドッグ 【狗咬狗】

で、外に出ないで何をしていたかというと、安いというだけで大量に借りてしまったDVDを消費してました。で、第一弾はこちら。


ドッグ・バイト・ドッグ [DVD]

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漁船の船倉に閉じ込められるようにして香港に密航してきた野犬のような一人の男。上陸すると一転して人のような振る舞いをはじめ、待ち合わせていたらしい的士に乗り込み、運転手となにやら紙切れを付き合わせて確認したあと中華料理屋へ乗り込む。メニューを出されるが字が読めないようで写真にまるを書き込んで大量に注文し、出てきた料理を手掴みでグシグシ口に詰め込んでいると松本零士風の老人とその妻らしい二人連れが入店してくる。その顔をみてポケットから一枚の写真をとりだし妻の顔を確認した男は、まだ残っていた食い物を詰め込めるだけ詰めたあと、やにわにその老女のそばまで歩み寄ったかと思うと銃を取り出し彼女の頭を吹き飛ばす。とどめのつもりだろうか、首にも一発撃ちこんだあと、厨房を抜けて出て行く。


警察がやってきて死体を見て言う。「プロの仕事だな」と。どういうわけか監視カメラには頭しか写っていなかったらしい。そこへなにやら事情を抱えているらしい悩める若い刑事が遅れてやってきて、上司らしい刑事たちと悶着を起し、店の外へ飛び出ると、そこにはマヌケにも例の殺し屋を載せてきたタクシーが止まっており、事件によって集まった警察車両の所為で渋滞しているのが気に入らないらしく激しくクラクションを鳴らしていて、若い刑事に目をつけられてしまう。そしてそのタクシーを走って追いかけていくと例の殺し屋がタクシーに拾われるのを待っていて、ひと目で怪しいやつだと気付いた刑事と気付かれたことに気付いた殺し屋の追いかけっこが始まるのだった。


このあたりで、既にこの映画がダメっぽいな、と思い始めていたのだが、殺し屋が逃げ込んだ屋台街の場面でその思いは確信に変わりました。もうね、バカ。ありとあらゆる登場人物がバカ。全ての登場人物がバカ。それも、笑わせるためにバカをやっているなら兎も角、みなシリアスな顔でシリアスにバカを演じているのだから笑うに笑えない(一箇所だけ。上司の刑事がバカな若い刑事を平手で殴るところだけは、どう見たってコントになっていて笑えましたけれど。)。なんでこんな仕事請けたんだよお前ら。いくらなんでもちょっとは仕事選べよという気持ちにしかならない。


違うな。バカなんじゃない。バカなのではなくて、破綻している。個々の思考に一貫性がない。というよりカットが変わるたびに別人になってると言っていいくらいバラバラ。凄いのは、どんな登場人物も破綻しているという点。そいつらが延々と真面目な苦々しいシリアスな表情でわけのわからん行動をとりまくり、殺しまくり、死にまくるだけ、という恐ろしい映画なのだった。ここまで徹底的に破綻しているものは見たことがない。一点だけ、救いがあるとすれば、こいつらバカどもが皆死んでくれるというところだろうか。出来れば赤ん坊も死んで欲しかった。


もうね、褒める点がまったくない。強いて言えば、画面だけはトーンも一定だったし、これといった破綻もなく、構図もそれなりに考えているようではあった(原作が漫画かなにかだろうか)。ということでなにやらカメラマンの仕事が勿体無く感じただけでした。


僕だって見ていればこう言ったことでしょう。“『ホワイトアウト』がマシに見えた”と。ひょっとすると『デビルマン』といい勝負かもしれない(こっちも未見ですが)。ともかく稀に見る屑映画でした。ネタとしてさえ見る価値なし。役者が可哀想(まぁ脚本読んだ時点で気づけよと)。