アメリカン・スプレンダー

ジャック・ニコルソンアダム・サンドラーのを見ようと思って探したけれど見つからず。なんとなく借りたのがこれ。

アメリカン・スプレンダー [DVD]

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ハービー・ピーカーというおっちゃんの半生を映画化したらしいんだけど、まったく知らない。途中で出てくるナレーターが本人ということらしい。


どうも非モテ道まっしぐらのヒネタおっちゃんでその起源は小学生にまで遡る。ま、ひねた子供だったのがそのまま大人になったと。で、国立だか公立の病院でファイル整理というなんとも地味な仕事をしながら、なんとか抜け出したいと思っていたところ、レコードマニアとしてうろついていたガレージセールでであった友達が結構有名な漫画家になったので漫画の脚本を書いて見せたところおもしれーよこれ、画をつけてやんよと言われたのを切っ掛けに漫画原作者になったというお話。


なんだか、自分で漫画を書こうとしたけれど絶望的にヘタクソで、仕方なく原作者になっちまったあたりが生々しく、悲しい。でもうけたからいいやね、おじさん。面白いのは原作はおなじハービーおじさんなのに画を書く人が変わるの。でもおなじ「アメリカンスプレンダー」という漫画として発表されるの。なんかアメリカンだな。


主演はポール・ジアマッティという人。名前を聞いてもさっぱりだけど、顔をみれば、ああ!と拍子を打ちたくなるよく見る脇役。脇役っていっても『レディ・イン・ザ・ウォーター』でも主演張ってたけど。眉間に皺を寄せてネメアゲル、ネメツケル、そんな目つきで、なおかつ若干猫背でしかも若干肩をそびやかせ、かつ両手をポケットに突っ込んで歩くという、芯からヒネクレテマスといった様子をきっちり演じきっている(しかもかなりの時間、声が掠れている)。これは冷静に見るとかなり無理のある、骨格に悪いとしか思えない異様なんだけども結構サマになっている。それはこれが単なる怪演ではなく、本物のハービー・ピーカーその人がまんまこういう人であることから考えると、ヒネタ人間がさらにつらい状況に置かれ続けたらこうなりますという典型だから。ということなのかもしれない。


ほかにも同僚のトビー(だっけ?)という変人(精神薄弱じゃないかと思うんだけど、NERD=真性オタクということになっている)とか漫画のファンで会ったその日に結婚しましょうといって本当に結婚した妻だとか色んなところにキラ星のごとく変人がちりばめられていて、その皆がそれなりに魅力的に見える。というかこういう変人たちこそが普通なんじゃないかと思えてくる。というか皆だってどっか変だろ?それだけのことじゃんと。でも、変人を持ち出して救いにしているとなると哲也さんは気に入らないかもしれんね。


で、ナレーターとしてだけでなく、ところどころ本物のハービーが出てくるんだけど、やっぱりなんというか、映画にしたくなるのが分かるような魅力があるんだわこのおっちゃん。そんな風に思い始めると、目元のあたりや、話す様子、声なんかアル・パチーノそっくりに見えてきたりするから不思議だな(俺の脳ミソが)。


別にどうということはないのかもしれないけど、好きです。なんかね、チャールズ・ブコウスキーっぽい臭いがするのね。DVDの特典に付いていたインタビューの感じとか。例えばね、DVD買ってくれてありがとうとか生活が潤えば嬉しいとか物凄く自然に言ってるの。ワロタけどべつに卑しいとは思わなかった。どかん。となにか実体をぶつけられた感じ。