[大蟻食!]精霊の守り人…業務連絡ね

いやぁ、いいねこれは。神山健治がカリスマに見えてきた。


豪快な女用心棒バルサはどうみても草薙素子なんだけど、同じようにかっこいいし(山月記の回で咆えたところなんて大蟻食さんを思い出したぜ)、山にこもって薬草ばかりいじっていて、どうしたって地味でいつもバルサに振り回されているドMなタンダ(これは、トグサ?)もかわいい。チャグムにしても声、顔ともに聡明な雰囲気がよく出ていて(笑い男か)、ショタにはたまらんだろうし(ショタでなくともかわいく見えるなあれは)、どう見ても湯婆婆で、同じように殺しても死ななそうなダイ・ハード=トロガイ師もその傍若無人ぶりと桁違いな呪術師としての知識と行動力がとても魅力的だ。


お話そのものも、よく出来ている。原作もいいんだろうけど、画がとてもいい。タンダが踏み込んだあの世=ナユグの光景がすごい。一見するとすばらしい大自然といった感じだし、巨大な亀や鯨の造形もおもしろいんだけど、全体を照らしたあの世界の明るさが狂気に通じているようで、見ていて脳みそがビリビリした。


もちろんこの世=サグだって良くできている。はっきり言えば殆どの場面はどこかで見たようなものばかりなのは間違いないんだけど、組み合わせがいいんだろう。日常生活で使われる道具も細かく描かれているし、いくつかの異なった民族、文化が混じりあって共存している様子も丁寧に見せてくれる。珍しいのは都を貫く巨大な大通りと広大な白州に蓮の葉のような平べったい建物と塔が立っている皇居。あの広さは異常。


その皇居には塔だけでなく、巨大な箱根寄木細工の秘密箱のようなもので蓋をされた帝さえ入ることが許されない地下空間があって、そこには本当の歴史を記した石版が収められているというのも、お約束といえばそうなんだけど、建国200年という微妙に若い国のヨチヨチ具合とアイマッテとても面白い。


また皇居のいたるところに配置された浄瑠璃や歌舞伎に出て来る黒子も面白い。陽の当たるえらいひとが「これより無人の態にて」というと黒子どもがさっと顔に垂れ幕をかける。と、そこには人が居ないという決まりごとになっているらしく、顔をだした黒子の前ではできない内容の話ができるようになる。どう考えてたって黒子には聞こえているはずなんだけど、聞こえないことになっている。これ、かなりツボなんだけど。


こういうしきたりというのか所作なんかも含まれるんだろうけど、皇居なんかを見るとデザインという言葉が頭から離れなくなる。機能性によって出来上がった結果としての形と儀式・儀礼のための形。鳥居なんて機能性なんてないもんな。こういう殆ど無にちかいところから意味と形を作り上げるというのは僕にとっては驚異的な作業に見える。


兎に角、大蟻食はこれ見るように。


と、偉そうに言ってみる。どうせ顔合わせないしさいいじゃんねー。いつでも遁走できるし。