晴れ


ええ、そうですよ、マニアですよぼくは。

今日は投票に行った。候補者のうち2人しか話を聞いてないしどうしようかななどと思いながら会場まで行き、エイやぁと投票を済ませた帰り道。

会場は公民館であって、普段あまり通らないんだが、降りてきたところの交差点の角に見慣れない店が開いていたのでちょっと覗いて見ると駄菓子屋だった。見るからに古く安普請な木造のお店で和菓子屋かケーキ屋のような商品棚(ただしこのお店のはガラスケースではなく木製でカバーがない)が歩道に面しているだけのつくりなので、普通の駄菓子屋のように奥へ入っていくことが出来ない。その棚の直ぐ後ろに年齢不詳のおばさんが座っていた。格好はおばさんっぽい古い洋服で、顔はお婆さんなんだけど何歳くらいと言いづらいヘンな雰囲気を持った人だったが、そもそも照明がまったくないので薄暗くてはっきり見えない。

で、棚はざっくりおおきく区切られたその中に商品がどちゃっと放り込まれていて、見てみるとゼリーばかり。蒟蒻ゼリーよりも大きめのものが何種類か置いてあり、ど真ん中の場所には容器にミッキーマウスの絵が書かれたゼリーがあって、中身が見えないような原色の容器で、他のものとくらべてそいつだけはちょっと薄く、やっぱりキャラクターものは高いんだなと納得したりした。

ゼリーはイマイチ好きではないので他にはなんかないかな、どうしようかなと思っていたら、店のおばさんが棚の奥でなにやらがちゃがちゃ音をさせた途端、木製の棚がぎこちなく左へスライドして別の商品棚が出てきた。木造のぼろい棚なのにスライドなんてするのかと吃驚したけど(というかそもそもスライドするショウケースなんて見たことがない)、この機能のお陰で、お店のなかまで入れる普通の駄菓子屋とまでは行かなくても結構な量の商品が置けるんだなぁと感心した。が、やっぱりプラスチックケースに入った賞味期限いつまでだよと突っ込みたくなるようなものばかりで、買う気になれなかったけど、たった一人僕だけのためにケースを手動でスライドさせたおばあさんの無言の視線というか存在が重くて、何か買わないといけない雰囲気になってしまっていた。

なので、みんな同じようなお菓子だったけど何かないかとよーっく見ていたら一番右端の一番したの枠に赤いパンケーキみたいなものを発見。おっと思い寄ってみるとどうもイチゴというかラズベリーというかああいう感じのスポンジケーキ見たいなものが大きなお皿にむき出しで載っていた。これならいけると思った瞬間、いままで無言だったおばあさんが突然「それは、うちで作った手作りなんやけど、やめといたほうがええで」といって素手で一枚取り出した。ケーキは厚さ1センチくらいで、CDより少し小さいくらいの円盤状だったけど、おばあさんはそれを人差し指と親指でつまんでむしゃむしゃ食べだした。いや、おばあさんの動作はとてもゆっくりとしたものだったし、ケーキも柔らかくてすこしねばっとした感じだったので、むしゃむしゃというよりムチャ、ヌチャっと言ったほうがいいかもしれない。

その様子が、これまた変で、どうみても気持ち悪いのになんだか美味しそうに見える。大体うちで作ったとか言っているけど、見た感じこのおばあさんのひとり暮らしっぽいし、ということはこのばあさんが作ったということだし、色もイチゴの色のような、なんか別の添加物を入れたような微妙な色だし、この暑い中、木箱のなかにむき出しでおいてあったしなぁ、しかも本人がやめたほうがいいって言ってるし、だけど喰ってるよなぁ目の前でしかも結構美味しそう。などと悩んでいるうちゆっくりと食べ続けていたおばあさんは、そのある種不気味なケーキを平らげてしまった。

そのタイミングで僕は買う買わないの決断をしなければいけない気がして、でも決まってなくて、うわぁ困ったーどうしよーと自分でもはっきり分かるほどの結構なストレスが掛かった瞬間。

目が覚めた。

時計見ると12時だよ。お昼だよ。真昼間だよ。しかも頭痛。折角の日曜なのにこの時間のすごし方。しかもこれから投票いかなきゃならんし。おきていきなりどっと疲れを感じた日曜日だった。起きた時点で半分しか残ってないにちようび。あしたつーか12時間後はもう月曜だよ。はああああああああああああぁ。