Zodiac

見てきた。『ゾディアック』なんだか上陸するときのボートの名前もゾディアックだったような気もするが、まあいい。


この映画、はっきり言うと、結末がすっきりしないんだけど、その点も含めてなにやら生々しい。


大体ね、冒頭に殺人鬼が車に乗った男女(夫婦?)を撃ち殺すんだけど、ガンガン撃つ。ガンガン撃ったあと一端自分の乗ってきた車に乗るんだけど、どうも男の方が死んでないとわかったらしく、戻ってきてまたガンガン撃つ。男は助手席から仰け反りながら後部座席に移る。


その後、白バイの警官が到着すると、その男は車からでて、後輪に凭れ掛かって警官に向かってなにやら合図を出す。つまり死んでない。あれだけガンガン撃たれているのに死んでない。


その後、ダム湖畔でまたもや男女が襲われるんだけど、今度はナイフでメッタ刺し。“メッタ刺されている”間、女はさけび続ける。これが怖い。すぐに死んでくれないんだもん。怖い。ぐさっ!ぐさっ!女の身体を回して今度は前面をぐさっ!ぐさっ!


もうね、ほんと怖い。本当の殺人がどんなものか知らんけど、あの“なかなか死なない様子”がなんだかホント臭い。いくつもの管轄の違う警察の連携の悪さも(みんな手を抜いてるわけではないし、真面目なんだけど上手くいかないところが)なんだか本当っぽかった。


で、こいつを見て思い出したのが、日本のどこかで、寝たきりの妻を看護し続けた夫が、妻に頼まれたんだったか、最後には殺してしまう事件があって、模擬法廷でこの事件の弁護をどうするかっていうのを昔NHKだったかでやった番組。このとき夫は一端包丁で刺したあと首を締めて殺していた。番組の中では、なんでそんな風にやったんだという話しが出ていたけれど、僕はこの夫は、悩んで悩んで悩みぬいた末に殺すと決めたところまでは良かったが(!)、実際刺してみたら直ぐに死ななかったので、怖くなってしまい、首を絞めたんじゃないかと思った。殺すという決断自体が大変で、実際に物理的に生物学的に殺すというのはどういうことかってところまで考えが及ばなかったんじゃないかと。そのことを思い出した。


逸れた。この映画、主人公だろうジェイク・ギレンホールが動き始めるまで凄く時間が掛かる。しかも動き始めたからといってスコーン!と解決するわけでもない。じゃぁなにを見るのか。


この映画は、多分若い人が見てもあまり面白くないんじゃないかと思う。この映画、ゾディアック事件の映画だけど実際はゾディアック事件が起こった前後のアメリカ(サンフランシスコ)の雰囲気を懐かしむために作ったんじゃないかなぁと。


とりあえず、あちこちで煙草吸ってる。街並みもなんとなく古い気がする。とりあえず、例のピラミッドビルについて、基礎なのか、地下部分を建設しているところから完成するまでの様子が映し出される。それに、何と言っても音楽が懐かしい。


役者達もなんだか分厚い雰囲気。脇役が沢山出てくるんだけど、もうほんと、沢山出てくるんだけど殆どの役者の顔を知っている。見たことのある顔ばかり。ちょろっとしか映らないちょい役まで、どこかで見た顔ばかり。そういう意味でもなんだか懐かしい。


特に、刑事の相棒の顔が、登場してからずっと見覚えがあるのに誰だか思い出せない状態が続いて苛々したんだけど、途中で分かりました。あまりに草臥れた顔だったので分かりづらかった。あれはERのマーク・グリーン。癌で死んじゃったDr.グリーンだった。


メインの役者も良かった。ジェイク・ギレンホールがあんな冴えない役ができるとは思ってなかったけど、結構似合ってた。刑事役もなんだか馴染み深い顔をしていたけれど、こっちは知らない役者だった。モミアゲかねぇ。刑事コロンボみたいなコートだろうか。


そうそう。ロバート・ダウニー・Jrが居た。彼に薬中やらアル中やらせると、ものすごーく本物っぽく見えるな。この前見た『スキャナー・ダークリー』もドラッグ中毒だったし。で、ところどころ彼独特の、というか『チャーリー』で見せた動きが混ざる。突然キョトンとしたように、アゴを引いておなかを突き出すピエロのような感じのあれ。もうトレードマークみたいなもんか。廃人っぽいJrは最高!そうそう、昔のブロック崩しのようなテニスゲームが出てきたな。やっぱ懐かしむための映画だろうなこれは(だって暗号解読もキッチリやるわけじゃないし。まぁ『ダビンチ・コード』よりはマシっぽいけど)。


シルベスター・スチュアート最高!