やっとこさ、見てまいりました。『硫黄島からの手紙』ですが、なんとまぁ、大蟻食さんの書かれていたまんまでした。というかあれは冗談ではなく、的確な表現であったのだと思い知りました。

決戦硫黄島に放り込まれた齧歯目みたいな大宮のパン屋さんがまあるく目を見開いて「えっ?」「えっ?」と思っているうちに何となく生き延びてしまうまでの間、目の前では戦争映画お約束のいい軍人悪い軍人絵巻が展開する、と言ってしまえばそれまでなのだが、いやあ、立派な日本映画(傍点)だった。

(強調はわたくし)


いや、ホント齧歯目だったので笑いそうになった(つーかちょっとわろた)。しかも例によって後頭部に布が垂れた日本兵の帽子を被っていたもんだからもう見た目がネズミ男だもん。だがしかし、その情けない小動物チックな動きと表情がぴったりであって誰がキャスティングしたのか知らんがよく出来ました(ハナマル)をあげます。二宮和也の演技も結構見られたし。


しかし、やっぱり初めから負け戦が決まっているので楽しい場面などなく、ただひたすら辛い状況が続くので息つく閑なくずーっと重苦しいままだったので、疲れました。栗林中将(渡辺謙:出来過ぎな感じもしたけれど)が、玉砕は禁じるというておるのに自決したり無茶な突撃で1000名死亡したりと命令無視がつづくあたり、どうころんでも勝ち目などなかったんだろうなと思います。そういえば、手榴弾による自決シーンが凄まじく、熱気や硫黄のにおいがあれば吐いているところでした。


渡辺謙は『ラストサムライ』とあまり変わらず、やりすぎの一歩手前で踏みとどまっているのでOK.アメリカのなーんにもない道を一人運転して帰る姿がとても印象的。ちょっと『ロード・トゥ・パーディション』を思い出した(いや、車が似てただけか)。中村獅童はうざい。死ねばいいのにと思ったが、アメリカ人が見たって同じ事を思うに違いない。下手だし。そして加瀬亮がいつもどおりの熱演。もう僕の中では鼻水垂らさせたら右に出るものはいない(少なくとも若手では)日本一の鼻水俳優に決定。


栗林中将が垂れた“いつの日か日本国民が自分たちのことを想い黙祷を捧げてくれる日が来る”っていう言葉が、こうなんとも言えず重苦しい。