サスガニバレルダロウナコレハ…

同志諸君に残念な報告をせねばならなくなったことは大変遺憾に思うが致し方なし。


諸君!森見登美彦氏はモテモテナイスガイであった。


日記においてしばしば記されてきたモテモテナイスガイ説は冗談ではなかったのだ。ナイスガイはよいとしてモテモテは許しがたい。もちろん著書の登場人物と著者本人を重ね合わせるなどというのは中2病の典型的な症状の一つであって一読者としては恥じ入るべきことであるのはヒャクも承知だが、だが、納得できん。だってそうじゃんねー日記でもむさくるしい男同士の日常しか語られてへんやん!うそつき!


こうなったらアレである。来年の祇園祭では、常に巡行の先頭を切る名誉ある月鉾の正面にふんどし一丁の登美彦氏を大の字に貼り付けて市中引き回しの上、同志による袋叩きタコなぐりの刑に処さねばならん。想像してほしい、ふんどし一丁の登美彦氏が四条河原町の交差点で敷き詰められた竹の上を華やかに飾り付けられた月鉾ごとグリグリっと回るところを。それくらいの辱めを与えねば収まらん。


だいたい今日は最初からダメダメな雰囲気だったのだ。出かけた時には晴れていたのに、地下鉄から出た途端雨が降り出す。「これはもうサイン会イヤイヤ♪という登美彦氏の念のなせる業に違いない」そう感じたにも関わらずジュンク堂BAL店へと足を運ぶのはこのサイン会こそ本日のわたくしのメインイベントであったからだ。なのに、なのに。


BALについて早速八階(!)まで昇り詰めた私は早速『きつねのはなし』(税込み¥1,470)を購入しNo.071と手書きされた整理券を入手しいきなり071という数字に驚いたが、「並ぶ順番とは関係ございません♪」とやさしく教えてくれた店員さんによって落ち着きを取り戻した。落ち着いた私はまだまだ時間がある上にお腹がすいていることに気付いたため、近くのウエンディーズへ行き、あそこ特有の肉肉したバーガーを食した。さらにまだまだ時間があることに再び気付いた私は、洛中で唯一漏れていた西国三十三箇所巡礼の旅第十八番札所山城国紫雲山頂法寺(いわゆる六角堂)に参り、いまだ七七忌(いわゆる四十九日)を迎えていない祖母のために旅の無事をこれでもかとばかりに祈る(なにせ脚が悪かったからな)。備えあれば憂いなし。


と、そのままBALへと引き返したが当方健脚のため早く着き過ぎた。どうしようか映画を見るには時間が足りぬし、どこか本屋へでも行こうか、いやしかしここが本屋だし、うーん、あ、そうだ八階に喫茶店があったではないか、あそこで時間を潰そう。と決心した私は、本日2回目であるため迷わずエスカレータへたどり着き八階へと向かった。


一階から八階というと結構な距離があり、一階ではそこそこ込んでいたエスカレータも階を重ねるごとに一人また一人と降りてゆかれるのでそのうちに私の前にいる人と私だけになってしまった。その数段前にいる人は鮮やかなオレンジ色の洋服に黒っぽいパンツを召した長身の美女であった。どんな美女かというとですね、うーんと、高嶋ちさこをグッと綺麗にした感じでグッと洗練したような立ち居振る舞い。そんなその方と私だけで数階分昇っていったのですよ。分かりますかね、アレですよ、夜駅から帰るときに偶々同じ方角に家があるだけなのに、少し前を行く小汚い女子高校生なんぞが急にタッタッタっと走り出すアレ。アレにちかい雰囲気を勝手に感じてしまった私はもう、サイン会を前にダメ度がグーッと上がってしまったのです。しかもその人も八階ですよ。しかも八階到着して分かれたはず(キャリアですがなにか?という雰囲気を漂わせてスタスタと歩いてゆかれました)なのにトイレの前でまーた接近。もうね、この人痴漢デス!と叫ばれたら窓から身を投げてましたね本と。


とはいえ、出すもの出したので三度落ち着きを取り戻した私は予定通りサイン会会場の直ぐ横(ガラス窓からよく見える)の喫茶店へ移動し、見知らぬ小父さんと相席ながらまずまずの量とまずまずの値段(安い)のホット珈琲を注文し、『きつねのはなし』を読み始めた。


Mozartの40番を聴きながら3,40分ほど読んだがなかなかの雰囲気。これはもったいない、寝る前にお布団のなかで読むのが正しい読み方だろうななどと思い本を閉じた。そしてサイン会会場をチラ見すると、あ゛? 始まった?黒ずくめの男がサインをしてもらっている様子。これはいかん、一番乗りを逃したなーと思い支払いを済ませて喫茶店を出ると、どうも通路にそってならんで座っている人たちがいる。これはもしや?と思い店員さんに聞くと「はい、皆さん並ばれてます」との返事。うはーやってもうたこれでは二桁突入じゃん!もう僕の馬鹿馬鹿、いや『きつねのはなし』が面白いのがイケナインダッ!などとニヤツキながら通路を進むと、きつねのお面をつけた店員さんが「あちらです」と手のひらを90度回った方角(9時方向ね)へ。よっく見ると、階段に行列が。


ヌカッタ。喫茶店からは見えんところにどーーーんとながい行列が出来ていたのだ。糞、ジュンク堂め。これまでいろいろと世話になったし、店員さんも本好きだったし贔屓にしてたのに。半ベソ掻きながら二階分したまで降りていきました。


40分くらいかけて再び八階へ。あ、自分の名前とメッセージを書く紙とボールペンを配ってた店員のFさんがとてもかわいいひとだったので苦にはなりませんでした(だれかに似てるなーと思っていたら知り合いの野郎だと気付いたことは内緒にしておきます)。それはそれとして。とうとう私の番がやって参りました。手前で店員さんに預けたメッセージには“肩書きにモテモテナイスガイと書いてください”と殊勝な物言いで記して置いた。


そして、いざ本尊の前に。予想に反しスラスラとペンを走らせる登美彦氏。「お?メッセージ見て笑ってくださいました?お?なかなか素晴らしい字をお書きになる、これは相当練習されたのではなかろうか?ふむふむ、払い(特に登という字)の部分にデキル男の雰囲気が漂っていてなかなか頼もしい字を書かれるな、さすがナイスガイ!はっはっは!」などと思っていたらあ!っと言う間に書き終わってしまった。しかしそこにはモテモテナイスガイの文字は無い。三度落ち着きを失った私は、言うに事欠いて「ん゛,あ゛!」などと呻いてしまった。なんてこったい。あそこはせめて、せめてサザエさんバリにんあんっん!くらいのリアクションをとるべきであった。








(↑こういうのが欲しかったの… orz)

まあいい。そのような恥を積み重ねてさらにそのうえから厚く塗りこめて捏ね上げたのが今の私である。問題は次の瞬間に訪れた。「ん?どうかしました?」と登美彦先生の隣にいてサインの終わった本を渡す係りをしていた人が声をかけて下さったのだ。トッサニ顔見ましたよ。誰だと思います?あーた、あのオレンジ色の美女ですよビジョ。真昼間だからタスカッタようなものの真っ暗な帰り道ならぜってーやべぇよなどと私がビクついていたあの方ですよ。寄り添うようにというか寄り添ってた!絶対!ね?ね?許せないでしょう?


…ふう。…んーと、んーっと、しかしですね、4度落ち着いて考えるとですね、どう考えてもあの人は書店あるいは出版社の人ですな。ははは。早とちりでした。一生付いて行きます(多分)。でもね、できるだけ自称モテモテ&ナイスガイで行ってください。


行列だって、気付かなかった僕がアホなだけです。ジュンク堂は悪くありません。どうみてもアルバイトじゃね?というほどもやしな風貌のO店長は若いです。だからお店全体に元気があるのです。四条のほうもいい感じですけど。


ということでいつもの一人相撲でした。疲れました。寝ます。