暑すぎて早起きしたな。寒がりなので暑いのは嫌いじゃないけど、ふー。


勿体ないから忘れないうちに書いておこう。

リトル・バイ・リトル

リトル・バイ・リトル

これは短くてさらっと読めた。一文一文がリズムよかったからかな。


すこし不幸にも見えるふみの静かな日常が淡々と描かれる。特別な事件は起こらない。ふみ自身にとって父親のエピソードは事件かもしれないけど。


で、この小説、文章はリズムがよいのか読みやすく、ところどころはっとするような上手い文章、描写がちりばめられている。上手すぎて鼻に付くちょっと手前という感じなのでまあよし。ただ、ふみという主人公はその上手すぎる文章にはあってないかもしれない。微妙な違和感が残る。


とにかく著者本人が書いているように薄暗い世界のなか、ほんのり明るい終わり方をしていて、それはそれでいい。だがしかし!微妙に屈折してなにかを諦めたようなふみには不幸の影がチラチラ見えるんだけど、このふみに明るさをもたらす周という青年がまったく品行方正で健全で屈託がなく、そんなヤツがいるんだろうか、いたとしてなんでふみを選んだんだろうか、そんな都合のいいことがあるのかという点が引っかかった。つか気に入らない。周の姉もいい人だし、父親とも釣りに行ったりするからふみのような家庭的な問題はなさそう。実は、周もどっか暗さを感じるんだけどそれは周という人間を知る手がかりがふみとの会話くらいしかないからだろう。結局のところ白馬の王子様なんだな。それがつまらない。


とは言っても、全体的な雰囲気は静かでいいし、文章は悪くないし、いい作品だろうと思う。あれだ、ちょっと前に読んだ小川洋子さんの『博士の愛した数式』とどことなく似ているけど、これと比べると『博士〜』はどこかどぎつさというかあざとさを感じてしまう。まあ、あっちはよりファンタジー度が高い(設定)ので仕方ないのかもしれない。リトル・バイ・リトルはテレビドラマ、博士の愛した数式は舞台といった感じかな。