天使 (文春文庫)ひきつづきネタばれ注意

いやぁ。面白くてしょうがないなこれ。
天使 (文春文庫)』と『雲雀』を行ったり来たり。こんな読み方初めてですが滅茶おもろい。
ま、こんな続編見たことなかったから当たり前といえば当たり前ですが。
あんまり考えていないので思いついたことをつらつら行きます(ま自分のメモですが)
-終わりかた初めて『天使』を読み終えたときにいちばん強く感じたのはあまりにもあっけないというか唐突な終わり方だった。同じように唐突で衝撃的な終わり方で思い出すのは『悪童日記 (Hayakawa Novels)』。まぁ続編があったわけですが、あの場合一人の人格としての双子(?)の死のようなもんだで、まぁこれで終りでもいいのかな?この双子かなりユニークだし、などと思ったわけです。
一方、『天使』はジェルジュがフローラの部屋でメザーリを倒し、街へ出て行くところで終わってる。はっきり言ってこれがクライマックスじゃぁない。天使でいちばん解りやすい山はザヴァチル関連だし。この山超えてからの分量もなかなかあるので、ひとつの事件が特別重要ではないようだし。逆に単純なインフレみたいなお話の形を取ってないので、細かい事件出来事を通じて成長していくジェルジュっていうところに焦点がいく。でなにが言いたいのかというと、むっちゃりねっちりべっとり舐めまわすやうに読んでいれば、天使を読み終わったときに続編つうか姉妹編の存在を予測出来たのでは?ということです。だれか予測した人いるんかいな?


  • 『雲雀』とのつながりで、構造とかイマイチ解からんので雲雀へ

いやぁ、小説ってこんなに考えられてたのね。というのが2冊を読んだ感想ですねん。2作品のつながりで言うと、ケーラーの骨折などは判りやすい。ライタ男爵(お父ちゃんね)がそのいかつい見た目に反して絵画を好むところや、ジェルジュのお母さんとの関わりなどかなり細かい裏設定(これって漫画とかアニメではよく考えるんですけど)があったことに驚いた。いや裏設定というか、その話だけで別の作品が書かれているので細かいのは当たり前ですが。確かにあれらの話を天使に入れるのは無理。ちゃんと考えられてる。『雲雀』のなかの順序も考えると面白い(いまはもうばらばらに読んでいるので)。行ったり来たり、進んだり戻ったりで相当楽しめる。面白すぎて笑ったついでによだれまで落としちまったよ。


  • 時代(あるいは世界)

『天使』で気になったのは“この世界が滅びて新しい世界が生まれるまで負け続けるだろうが、少なくとも自分は昂然と頭を上げて次の世界へ入っていくだろう”といったところ。世界史とかまーったく知らないのでずれてるかもしれないけど。『天使』って上でも書きましたが、やっぱり良くある小説とは違って大きなひとつの山ってのが無くて、細かいお話の連続で時代の変わり目を見せようとしているように見える。 古い世界と新しい世界。ジェルジュたちが生きている世界では馬車と自動車が共存している(この絵を想像するとなんかドキドキする)。しかし馬車は消えていき、車にとって替わられる。『雲雀』では顧問官は馬車に乗っていた(多分)。『天使』でもライタ男爵=父ちゃんは馬車に乗っていた。ま、戦時のパリだから自動車がないのかとも思ったけど、お金はいっぱい持ってるし、なにより仕事柄馬車より自動車のほうが使い勝手がいいはず。趣味で乗ってるとしか思えない。でもジェルジュは『雲雀』のなかで馬鹿でかいエンジンを積んだ車に乗る。親の世代は馬車の時代に、ジェルジュたちは自動車の時代を生きる(なーんてソレっぽく書いたりして(/ω\))。コルセットもね。


それと関連して、顧問官の死に方(というか消え方といった方がいいかも)は凄まじい。彼の有能さを知る人間ほど鮮烈に感じるのではないだろうか(お偉いさんはなんとも思わんかもね)。顧問官も昔の人間で、ジェルジュに伯爵の養子縁組の話を持ってくる(大公じゃないように思う)がそれを拒否するジェルジュを認めている。(顧問官も昔は男爵ではなかったというから能力によって爵位を得たはずで、爵位を受け取らないジェルジュを見てどんな気持ちになったのかを考えると、なんというか複雑。これもねっちり読めば埋め込まれているのに気づくのだろうか?)ジェルジュにとって顧問官はもう一人の父親(コンラートは兄あるいは叔父)のようなもので、彼が剃刀でスパっと切り離したように完璧に消えることで古い時代の終りが感じられる。彼の死と古い世界の死が重なる。


同じように消えた人がもう一人いることに気づいたんでそれも。そう、それは懐かしや『バルタザールの遍歴 (文春文庫)』の双子メルヒオールとバルタザールのお母さん失礼御母上の死です。あれはある意味顧問官とは比べものにならないほど激しい。親がきっちり死ねば子は新しい世界に進みやすいのか?読者だけか?そういえばメルヒオールたちは屈託なく自動車を乗り回していた。しかしジェルジュは古い世界=顧問官から何か引き継いだものを抱えて進んでいく。ケーラーも新しい世界に進むだろうが同様にその何かを抱えているに違いない(それはこの世には名誉というものがあり、同盟国の領土と引き換えの和平は受け入れられないと言ったところに現れている)。ダーフィットも生きていれば同様だっただろうと思う。


  • 疑問解らないことなど。

顧問官は女性を愛したことがない。これは?顧問官と大公の関係。
ヨヴァンは弟のようなもの。しかーし。ヨヴァンが狂犬として襲い掛かるのはなぜか。なぜ殺さなかったのか?と言っていた。ヨヴァンはジェルジュのことが好きだったはず。感覚が発現したのもジェルジュの影響だし。ジェルジュはヨヴァンの頭を浚ったとき何を見たのか?


  • へへ脇役なんですけど。たった3ページほどですが。

ジェルジュにクロアチア語を教えた弁護士、シュテファン・ヤルノヴィチ夫妻がすんげー印象に残るんだねー。なんでかね。すっげー短い文章で、やわらかくて脆い幸せがよく描かれているからか。

まぁおいらなんてのは読めてねぇ!野郎かも(っていうか可能性大)知れませんが。
何はともあれ楽しいのは本当のことで、こういう時間のきっかけを下さいました大蟻食閣下=佐藤亜紀様には深くふかーく感謝申し上げます(TдT) アリガトウ。しあわせ。
文句とか停止してるし、ブログもいまのところコメント機能OFFなんで自分ちで失礼しますた。