否定と肯定 【Denial:2016】

実話な上にヘビーな内容なのでフィクションを織り込んでドラマティックにすることができなかったらしい。見ていてそれはそれで仕方ないとおもった。たかが映画と言えなくもないけれど、ベースとなった実話を変に操作すると歴史改変主義者がそこを利用してすべてを否定し始めるだろうから。


主役はレイチェル・ワイズだけど法廷そのもののほうが強い。といってもそちらも劇的な逆転なんてものはないので法廷物としては弱い。中途半端だけど現実がこうであったので仕方ないよねという感じ。イーストウッドならさらっと嘘を挟んでそれなりの「映画」にしたんだろうなと思った。


というのはアメリカ人教授役のレイチェル・ワイズが裁判に関して怒りを抱えて異境の地ロンドンをジョギングしているシーンがイーストウッド監督作『ハドソン川の奇跡』でニューヨークの街を走るトム・ハンクスと重なって見えたからで、あちらも実話だったしトムの役は国家運輸安全委員会の事故調査のために殆ど裁判を受けているような状態であったしそっくりだと思い、この映画を見ながら思い出していたから。


この映画はBBCの映画で監督もTVの世界の人らしいので映画的でなくてもおかしくないのかもしれない。これは一種のお勉強映画としてみればいいのかもしれない。