誓い 【Gallipoli:1981】

見た。

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第一次世界大戦もの。というとそれほど珍しくはないけれど実はオーストラリア軍のお話なので結構珍しい映画かもしれない。監督はピーター・ウィアーで主演はメル・ギブソンということでオーストラリア映画


メル・ギブソン若いわかい。ぴっちぴち。昔の出始めのころの唐沢寿明っぽい感じ。もう一人マーク・リーという人が主演。感じの良い青年なんだけど記憶にないので他にどんな仕事してるかなと思って調べたら無残なおっちゃんになっておった。


それはそれとして。メル・ギブソン演じるフランクとマーク・リー演じるアーチーの二人はともに20歳にもならない青年で二人とも短距離走を得意としていてちょっとした地方都市で行われる賞金のでるレースに出場して知り合いになる。で、なんだかんだで二人して志願兵になるんだけども映画の前半は短距離ランナーとしての二人の様子と軍に入隊するためにオーストラリアを横断する(まともな装備もないまま砂漠を横断したりする)。


アーチーのほうは彼を短距離ランナーとして厳しく指導し育ててきた伯父の反対を押し切る形で入隊する。フランクのほうは最初は戦争に舞い上がる周囲の連中とは違って軍にはまったく興味を示していなかったけれどアーチーに誘われて入隊する。面白いのはフランクの父が言った「あいつらはお前の祖父を吊るしたやつらだぞ!」というセリフで、要するに流刑地としてのオーストラリアと宗主国イギリスという点が描かれているところ。これはガリポリの戦闘にも影響しているとする描写があった。


アーチーは馬に乗れたために軽騎兵として入隊するが乗れなかったフランクは歩兵として入隊する。皆素人ばかりなのでそのまま戦場へ直行するわけにはいかず、いったんエジプトに立ち寄り軍隊としての訓練を受ける。このあたりが中盤。この訓練というのが生ぬるく牧歌的でナポレオンの雪合戦とかと変わらないゆるさ。あとエキゾチックなエジプトでの観光のシーンもあったりして総じてのんびりした平和な雰囲気で進んでいく。


でエジプトでのんびりした後に実戦投入されるんだけどこれがオーストラリアがイギリスと一緒に行ったガリポリ上陸作戦でオスマントルコの首都イスタンブールへの進軍の足掛かりとなる作戦で結果から言うとノルマンディー上陸作戦よりもさらにひどいのではないかという大失敗に終わる。この作戦の発案者はなんとチャーチルで、このあと海軍大臣を辞任することになる。


上陸作戦の前に戦場に近い海辺で待機するんだけど、海水浴をするときにみんなが小銭を帽子に放り込む。時折飛んでくる砲弾で怪我したやつがもらうちょっとした保険のようなお金。で、ひゅーんと砲弾が飛んでくるとみんなして一斉に潜ると着弾した砲弾は水面付近で破裂するだけで破片で怪我をしてもめったに死ぬことはなさそう。で、たまたま怪我した奴が笑いながら帽子いっぱいの小銭も持って帰るということでここでもまだ牧歌的。



イギリス軍とオーストラリア軍には前述したような微妙な差別感がある。微妙じゃないな、露骨だった。イギリス軍の将校がイギリス軍上陸に合わせて、陽動のためにオーストラリア軍に塹壕戦で膠着状態に陥っている別の戦場での突撃を命令する。突撃前に大がかりな艦砲射撃を行いすぐさま突撃に入る予定であったのがオーストラリア軍とイギリス軍の将校の時計がズレていたために砲撃が終わってもまだ突撃予定時間まで10分もあるという馬鹿な状況に陥る。明らかにミスであるし砲撃終了して10分も経てばオスマントルコ軍も元の配置にもどり機関銃も設置されているにもかかわらずイギリス人将校が突撃命令を下す。イギリス軍を無事に上陸させるためならオーストラリア軍がいくら死んだって構わないという雰囲気だった。この将校の顔がチャールズ皇太子にそっくりなのは気のせいだろうか。


史実を見てみると実は映画でみたものとは比べ物にならないくらいひどい負け戦だった。オスマントルコ軍が優秀であったこと、イギリス側は上陸地点の地理をまったく把握しておらず当然の敗戦だったらしい。イギリス軍は上陸地点の地形をまったく把握しておらず60年ほども昔の古い地図をもとに立案していたという。なだらかだと思い込んでいたところが実は切り立った崖で上陸そのものが困難だったとか、最終的に目的にしていた場所を手に入れていたとしても戦略上の価値はなかったとか、とにかくどうしようもない大失敗だったらしい。