るろうに剣心 【Rurouni Kenshin:2012】

いろいろ耳にはしていたけれど、映画の日だし見てきた。


ん、たしかに脚本がダメでした。NHK大河ドラマ龍馬伝』をやった大友啓史が監督。脚本は藤井清美と大友監督。藤井さんはどうやら舞台脚本の人らしい。


で、役者のほうはと言うと主演の佐藤健はなかなかよかった。アクションも出来る限り自分でやったということだけどこれもなかなか。戦闘モードで異常に加速するシーンが何度かあったけれどわりと自然な感じで上手く撮れていた。刀を打ち合わせるだけでなく柄頭で殴ったり背負い投げ混ぜてみたりとにかくよく動く。


で、めまぐるしく動くアクションは結構いいんだけどもう少しカメラを退いて全身映るくらいで撮影してもよかったんじゃないかなと思った。まあ下手すぎると引きで撮ったら間抜けにしか見えないから難しいところだけど結構よく動いてるように見えたからもったいない。


やられ役の人たちも身体張って頑張っていた。吹っ飛ばされて身体横にしたまま地面や床に落っこちるのは受身の取りようがないからそのままドスンと行ってるんだけどそういうシーンが何回もあった。あれすごい痛そう。


で、アクション全般に頑張っていたのに映画としてははっきりいってつまんなかった。2時間ちょっとが凄く長く感じた。もう愁嘆場というかその手のところに時間掛けすぎててイライラ(特に最後の武井咲の長台詞はお前もう市ねよレベル)。剣心が「殺さず」を決意することになったエピソードもタルイ。ザクザク切り殺していた男が人を殺すことをやめる、それを見ている側が自然なことと受け取るには実はあれでは不十分。タルイといったけどあれでは足りない。いちおうこれこれこういうシーンをこう配置して・・・という意図は分かるけど失敗している。感情の流れが繋がってないからあれではまったくダメ。上手く処理できないならないほうが良いくらい。


そもそも悪役との対決の原因がただの地上げだったりするし、住民の飲み水への毒物の混入なんていう地上げの手段も唐突だし、なぜ苦しんでるご近所さんたちが道場へ集まってくるのかと言う点もさっぱり説明がない説得力がない(薫に医術の心得がある、というようなシーンもなし)、成金の資産家である武田観柳(香川照之)の手下がすべてゴミ屑のバカだらけ(一人くらい切れ者雇ってるだろふつう)だし、ラスボス的なキャラクターが鵜堂刃衛(吉川晃司)と外印(綾野剛)と二人も居るし、そのうちの外印に関しては仮面を被った異様なキャラでかなり腕も立つにもかかわらずどういう背景があるのか一切説明ないし、シリアスなシーンとコメディシーンの配置がぜんぜんかみ合ってない。いっそ全部コメディにすればよかった。


正直にいうと最初の竹林のなかの戊辰戦争シーンはなかなかよく出来ていたと思う。剣心が凄腕の剣客で辻斬りで殺しまくっていたのに戦後・御一新のあとぱったりと人殺しを辞めたという、そこがまったく説得力を持っていないところが失敗の根源であることを考えあわせると、一本目の映画としては京都での人斬り抜刀斎時代および戊辰戦争終結までで一本撮っておくべきだったと思う。というかそっちのほうがぜったい面白い。アクションだらけだしね。


正直殺陣よかったので脚本糞だったのがすごく勿体無く感じる。素人のような脚本なんだけどなんでこんなことになるのかさっぱり分からない。


だいたい「けんしん」って名乗りを聞いてなんで「剣の心」って字までわかんだよ!客をバカにするのもいい加減にしとけよ大友&藤井さんよ。


そうそう斉藤洋介さんはよかった。安定したいつもの存在感。久しぶりにみた。吉川晃司も結構重量感あって悪くない。蒼井優犬神サーカス団の人っぽかった。