ブラックブック 【Zwartboek/Black Book:2006】

見た。


ブラックブック [DVD]

ブラックブック [DVD]




いやー面白かった。144分とちょっと長めだけどぜんぜんだれない。


ドイツ敗戦間際のオランダ。ユダヤ人であるラヘル・シュタイン(カリス・ファン・ハウテン)は家族と離れひとり農家の屋根裏に匿われていたところ、戦闘機に追いかけられていた爆撃機が機体を軽くするために投げ捨てた爆弾が農家を直撃したため、着の身着のまま逃走することになり、父親がユダヤ人に協力的な弁護士に預けていたダイヤモンドと現金を引き出し、レジスタンスとして活動しているというオランダ人刑事の手引きによってすでに連合軍によって解放されていた南部への脱出を図る。集合地点へ行くと同じグループに生き別れていた両親と弟を発見、喜んで船に乗り込むがいくらも行かないうちにドイツ軍に発見、銃撃されてしまいラヘル一人だけ生き残る。脱出に失敗したラヘルは街に戻り、名前を変え髪を染め、レジスタンスとして活動を始める。


冒頭イスラエルキブツ・シュタインで教師として子供たちを教えているシーンから始まるため、ラヘルが生き残ることはわかっている。わかっていはいるけれど最後まで緊張感がつづくあたり、よく出来ていると思う。そりゃ設定が設定だけどもそれでも失敗することはあるし。


潜伏、逃亡、スパイ活動(と恋愛)、ドイツ敗戦とオランダ解放(ラヘルは解放後にもひどい目にあう)、復讐、そして新天地での生活。これら全部をきちんと見せていて、どこにもとってつけたようなシーンはない。最後の中東戦争っぽいシーンは『Uボート』のラストとそっくりで、短いからとってつけたような感じもするけどちゃんと意味はある。


で、これを見ていて思い出した映画がある。どちらもナチに家族を殺された金髪の美しいヒロインが主役。





イングロリアス・バスターズ』(2009年)もとくにだれるということはなかったと記憶しているけど『ブラックブック』とはまったく違う。史実云々とは別のところで『イングロリアス・バスターズ』は無神経さを感じる(おなじ結末でも無神経ではない映画は作れると思う)。エンターテイメントだからダメというのではない。どちらの映画にもサスペンス的な要素はある。


タランティーノは間違いなくこの『ブラックブック』は見ていて、そのあとで『イングロリアス・バスターズ』を作った、ということはどういう意味があるんだろうな。同じような映画フリークであっても、タランティーノがヨーロッパ人なら違っていたんだろうか。