生きる 【Ikiru:1952】
ヘン見聞録でシロタさんが面白かった、と書いていたのを読んだので見た(ほら、志村さん苦手だし)。
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冒頭延々とナレーションが入り「おいおい大丈夫か?」と思ったけれどこの後は中盤にもう一度入るだけ。
前半は胃癌で余命が短いと知った市民課長・渡辺(志村喬)がものすごい落ち込みを見せる。そのヨレヨレの主人公と一緒に飲み歩くアドルム漬けの冴えない小説家(坂口安吾か?)が伊藤雄之助で、この人の異様な風体がすさまじい。この夜の渡辺は死相の仮面をつけた歩くブラックホールのよう。どんな陽気も吸い込んでもう二度と戻ってこないというそんな親父。この二人が最後に入った店で渡辺(志村喬)が『ゴンドラの唄』を歌うと周りの店員や客がドン引きする。
このあと、死の恐怖を紛らわせることができる、ということで1年ちょっとで役所を辞めてしまう若い娘(今と変わらん!)とデートをし、彼女が職場を移ったあともしつこく、もうほとんどストーカーの勢いで迫るんだけど、このときの志村喬の顔もそうとう恐ろしい。
で、その小娘から生きがいになるからなんか作れば?というヒントをもらって公園を作ろうとするんだけど、市役所に戻ってさあ作るぞという場面でいきなり葬式のシーンに移ってしまう。
ここからが長い。祭壇・遺影の前で市民課の部下や総務課、土木課・公園課、そして助役が並ぶ。公園を作った業績を自分のものにしようとしていた助役はいたたまれなくなってその場を去るが、なくなる前の様子や公園建設について話をつづける。
ここの会話によって公園が作られていく様子が徐々に明らかになり、最初は役所が組織として作ったものだと主張していた部下たちも実は渡辺の尽力によって成し得たことであると気がつく。このシーン、『十二人の怒れる男』にすごく似ている。あちらは1954年のTVドラマが最初なので『生きる』のほうが2年早いけど。
しかしこの映画見ていると、小役人に対する皮肉が強烈で、黒澤明自身が過去にものすごーく腹を立てたことがあるんじゃないのか?と思った。ん。