白いリボン 【Das weisse band:2009】

見てきた。


映画「白いリボン」公式サイト


ドイツの農村。始まりは村のドクターが立木に張られた針金の所為で起こった落馬事故。その後男爵家の一人息子が何者かに暴行され吊るされるが犯人は捕まらない。そうこうしているうちに助産婦のダウン症の一人息子もリンチにあい森のなかで失明寸前の状態で発見される。


というお話はたぶんどうでもいい。一応謎解きのようなところもあるが大した意味はないと思う。だからこそああいう終わり方なわけで。


この映画でいちばん力を入れているのは、実は大戦前夜のドイツの農村の再現だと思う。話がどうなるのか読めない、ということも一因としてあるにはあったけど、長いこの映画を最後まで見ることができたのは、農村の描写が面白かったから。


村人の半数を小作人として雇っている男爵家の人々。男爵に夫人、カールした金髪の一人息子。


その男爵家の敷地内にあると思しきけっこう大きな屋敷で暮らしている家令一家。


村で唯一のドクターの一家とその隣家に暮らす助産婦親子。


そして教会の牧師一家。


村の学校で子どもを教えている独身の教師。


男爵に雇われている小作人の一家。


この6種類の人々の暮らしぶりがまったく違う。立ち居振る舞いが違う(特に食事風景とかね)。それぞれの思考が違う。暮らしぶりだけでなく、彼らの顔がまったく違う。


そう。この映画を見ていて頭に浮かんできたのは2008年の大蟻食先生の講義で扱われていたテーマ『顔』の話。それぞれの階級の人々の顔が全然違う。男爵の息子が暴行された後で男爵が教会に人を集めて話をするシーンがある。ここで並んだ村人たちの顔がアップで写されるんだけど、ここですっとよみがえってきたのは『意志の勝利』。あの映画のレニ・リーフェンシュタールのあの顔の撮り方だった(まぁ実は、ここではっきりと講義のことを思い出したんだけども)。


後半、家庭崩壊寸前の男爵のもとに家令から知らせが届く。それはフェルディナント大公の暗殺のニュースで、この映画が第一次世界大戦直前の話であることがわかる。そう、まさにこの時期。


舞踏会へ向かう三人の農夫

舞踏会へ向かう三人の農夫




この本の表紙に使われている写真、アウグスト・ザンダーの写真。もうね、気持ち悪いくらい講義の話と一致していた。『顔』ってすごい。といっても現代の役者なんだけど、それぞれの階級・役にどういう顔の役者を使うのか、監督がきっちり念入りに選んでいるわけで、そこも恐ろしかったりする。


でも長すぎる。もうちょっと短くすればかなりいい映画になったような気配が。もったいない。


お休みの日に休み休みゆっくり見るならいいけど。お話そのものではないけれど、けっこう恐ろしい映画なのでもう見ないと思うけど。


あ、そういえば唯一目に良かったのは教師と婚約した娘エヴァ(Leonie Benesch)がとってもかわいかったところ。


このトレイラーの25秒ね!


ドイツ人であげなかわいいのは初めて見たかもしれない。って、まあサラ・ポーリーに似てるんだけど。うん、わかってる。自覚はある。ほっといてください。


で、このあと『キック・アス』も見た。こっちもちょっと長いと感じた。もうちょいテンポよければかなり面白い映画になったと思う。でもつかれたので明日書きます。



おまけ。予告でかなり来たのが『しあわせの雨傘』というカトリーヌ・ドヌーブ主演の映画。ま、予告見ただけでズレテル感じがありありなので傑作ではないと思う。なにが面白かったかってカトリーヌ・ドヌーブ太りすぎなとこ。そんでもって上下ジャージ姿になっていたりするところ。あとジェラール・ドパルデューもすんごい太ってた。どれくらいって『恋するベーカリー』のアレック・ボールドウィンくらい。笑った。


あと、ヒゲ生やしていて一見して気がつかなかったけどこの映画ファブリス・ルキーニが出てるの。だから見たい。