日曜日には鼠を殺せ 【Behold a Pale Horse:1964】

見た。


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スペイン内戦が終わって20年後のお話。


敗北した左派政権側の兵士たちがフランスに亡命して20年後。当時のリーダー(その後も年に4,5回はフランスから遠征に行っていたという台詞あり)だったマヌエル・アルティゲス(グレゴリー・ペック)のもとにはるばるスペインからやってきた少年パコが現れ、マヌエルの居場所を吐くよう拷問されて殺された父の仇を討ってほしいと頼むけれど、疲れて気力も体力も衰えたマヌエルはこれを断る。その直後、密輸を生業とするカルロスから故郷に住むマヌエルの母が危篤状態であるという知らせを聞いて、命の危険を冒してまで帰郷するかどうか迷い始める。


という話だけど、なんか違う。面白い。緊張感あるし、なにより『ローマの休日』では全くと言っていいほど魅力のなかったグレゴリー・ペックがカッコイイ。でもなんか変だ、この映画。


少年がおかしい。オマー・シャリフ演じる神父が訪ねてきた後でしゃっくりが止まらなくなる。嘘を吐いたことと関係あるのかもしれないけれど良くわからない。マヌエルがパコに与えたサッカーボール。そしてルルド


ルルドの様子が、あれは多分実際の光景をそのまま撮影していると思うんだけど、洞窟の入口に松葉づえがずらーっと吊るされていたり、車椅子やベッドに寝たまま並ぶたくさんの巡礼者の様子。けっこうこれが怖い。オマー・シャリフたちスペインの神父の興奮ぶりやビニョラス警察署長(アンソニー・クイン)やその愛人のルルドに対する様子を見ると、ルルドへの巡礼というものがかなり大きな価値を持っているらしいことがわかるけれど、実際のところピンとこない。日本だと大昔のお伊勢参りくらいしか思いつかないけれど、ルルドへの巡礼はそれ以上に切実な感じがする。怪我人病人の治りたいという執念のようなものが渦巻いているようで恐ろしい。


なんだかんだあって、結局マヌエルは帰郷してアンソニー・クインと対決すると決める。そのために埋めていた銃や手榴弾を掘り出しに昔の仲間のところへ行ったときに、酒場の娘と出会うんだけど、マヌエルは彼女をちょっとエロい目で見た後、酒代としては多すぎるお金を払う。娘のほうもまんざらではない(うおっ、恥ずかしいなこの言い回し)感じになっておっと思うんだけどなにもないまま去っていく。一瞬なんだこりゃ、と思ったけれど、これはフランスに亡命して20年が経過し、体力も衰え気力も失った男になり下がっていたマヌエルが、かつての仲間からも敵からも一目置かれていた指導者に戻ったということを示しているのかもしれない、と思いなおす。昔はすんごくモテていたんだろうなと。


で、そのあとのシーンでは復活した勢いそのままに、スパイだった男に対して脅しをかけておいて解放するんだけどもこちらはあっさりと裏切られる。昔であればあの脅しは効いたんだろうけど、今のマヌエルにはそんな力は残っていないってことなんだろう(あと時代がかわっているし)。ただ屋根の上にいた狙撃手は喉への手刀の一閃で倒している。


しかし、あの最後はどういう意味なのか分らない。歴史的な背景を知っていれば分るものなんだろうか。町に溢れる群衆の様子。オマー・シャリフの顔。ばつん、という感じで断ち切られた感覚。『天井桟敷の人々』とか小説の『天使』とかあんなん。


不思議なのはスパイはマヌエルの住所を知っていたのに、警察はなぜ拷問してまでパコの父から聞き出そうとしたのかってところ。まだスペインに遠征していたころのことなんだろうか。でもパコはまだ小学生くらいだしなぁ。


まあいちばんの謎は『日曜日には鼠を殺せ』という邦題なんだけど。なんだこりゃ(原作小説のタイトルみたいね)。