ナポレオン 【Napoléon:1927】

これを見た。


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いやあ…いろんな意味でけっこう凄い映画だった。



えーこんな昔からこんな手法があったのか、とか、こんな表現があったのか、とか、うおお、これは手持ちカメラによるドキュメンタリーっぽいシーンだな、など見た目だけでも色々面白かった。


戦争のシーンに指揮をとるナポレオンの顔を映しこんだ二重露光や一コマずつ繋いだんじゃないかとおもうほどめまぐるしく人の顔が次々入れ替わるシーン、ツーロンの地図の上に数式をたくさん重ねることでナポレオンコンピュータが戦略を立てていることを示すシーン、文字だけを散らしたエヴァンゲリヲンのようなシーン、さらにはセパレート画面や3つのフィルムを横につないだパノラマなどかなり驚きながら見ることができたので長くても気にならなかった。


またかなりの数のギャグシーンもあり、それがまたお決まりというかスタンダードというか、こんな昔からあったのね、というシーンが多くて楽しかった。書類を喰ってしまう役人や太鼓の中に隠れて敵を叩いてまわる少年やもう数えきれないくらい。


あとは人の多さ。パリの住民や軍隊、国民公会の群衆などかなりの人数が動員されている。あと彼らの顔が濃い濃い。きれいな人からきったねえ、ほんっとーにきったねえおっさんまで凄まじく濃い顔の連続。彼らの顔を見ているだけでもかなり楽しかった。


主役のナポレオンは結構なりきってる様子がさまになっているんだけどもロベスピエールにマラーダントンの奇人3人組の登場シーンには吹いた。特にロベスピエール(マラーも凄いけど)が酷いあばた顔に丸い黒のサングラスをかけた顔。このサングラスについては『ナポレオンー獅子の時代ー』のwikiには事実かどうかわからないとか書いてあるけども少なくとも1927年のフランスではそういうイメージもあったということらしい。


他に、大きなイヤリングをつけ、赤い薔薇(モノクロだけど赤に決まっている!!)一本を持ちながら登場したサン・ジュスト。美男美女(主要キャラから群衆のなかの一人にいたるまで)には必ずといっていいほどかかっている紗が彼にも掛けられていたので美男という設定なのは間違いないし、まあある種の美男ではあるんだけども、もうなんというかこれが微妙というか、なんかこう田村正和的な美男であって、こうどんくさい感じ。あとで見てみるとなんとこれが監督のアベル・ガンスだったというので微妙さがさらに増加したww


おまけみたいなもんだけど、イタリア遠征軍司令官シェレルがスティーヴン・フライにそっくりだった。


他にもこうすごい顔がたくさんあらわれては消えていくので飽きる暇がなかった。


正直ツーロンの戦いのシーンなんて何をやっているのかいまいちわからなかったのでネットでちびちび読みながら観たりしたんだけど、あの人の多さや凄まじい雨の様子なんてかなり力が入っていることだけはよくわかった。変な迫力にあふれた映画だった。


おしいのは、これがイタリア遠征で終わっているところ。ただこれでも3時間超だしショウガナイ。一応幼年学校時代の地理の時間に絶海の孤島、忘れ去られた小島セントヘレナの板書をなぜか哀しげに見つめるナポレオン少年、という場面もあったんだけどねえ。


とにかくこれは面白かった。ほんとに。ナポレオンに詳しければもっとおもしろかったのに、と思うけども。