3時10分、決断のとき 【3:10 to Yuma:2007】 とうちゃん!

これを見てきた。


3時10分、決断のとき


面白かった。とても。


鉄道用地として立ち退くよう川を干され水まで買わなくてはいけないところまで追い込まれて借金まみれ、返済の督促の代わりに牛馬小屋を焼かれるという西部劇ではよくあるシーンから始まる。


いくら借金しているからといって小屋を燃やされたなら一発くらい撃ち返せよ、なんで撃たないんだ!という長男からの冷たい視線にもかかわらず息子のとうちゃんであるダン・エヴァンズ(クリスチャン・ベール)は翌日町(町といっても掘立小屋のような木造が10軒ほどあるだけ)へいって話をつけるとしか言わない。


逃げた牛を連れ戻すために息子二人と一緒に馬に乗って出かけたエヴァンズ親子は、鉄道会社の大金を積んだ特別仕様(鉄板で覆われて銃眼があり後部にはガトリング砲を積んでいた)の馬車を襲った強盗団と鉢合わせする。強盗団のボスはベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)で、神の手と呼ばれるほどの早撃ちガンマンで極悪非道、生き残った馬車の護衛に人質としてとられた部下も、注意を怠ったという理由で一緒に撃ち殺すほどのマッチョな男で、その男臭さで部下から畏怖されている。特にNo.2と思しきオツム弱い系、あるいは根っからの卑怯系、あるいは非道系な顔をしたチャーリー・プリンス(ベン・フォスター)からは心酔されている。


とりあえず一時的に馬を取られただけで牛は返してもらったエヴァンズだったが、町へ帰ってみると女を口説くのに夢中で一人逃げ遅れていたベン・ウェイドが小さな町の保安官に逮捕されるところに遭遇する。で、大悪党ウェイドを裁判にかけられる連邦裁判所のあるユマ行き3:10発(3:10 to Yuma)の列車に乗せるため、遠く離れた駅まで200ドルの報酬で護送する一員に志願する。


と、当然ベンに心酔しているチャーリーたちがボスをとりもどすために追いかけてきて…というお話。


おもれえ。出てくる連中の顔が汚いこと汚いこと。発破作業に従事している中国人移民の様子も面白い。冒頭の馬車vs強盗団のアクションもすごくいい。冷静に指示を下す馬車側のリーダーの爺バイロン・マックロイがいいなと思っていたらピーター・フォンダだった。強盗団のほうでもメキシコ人狙撃手がいい感じ。スコープがバレルと同じくらい長い銃で、スコープを覗いた視界も映ってて面白かった。あと賞金がかけられた途端保安官たちに銃を向ける町の連中にもわろた。


ストーリーもかなり面白い。そりゃリメイクしたなるわ。と。


隊で一番の狙撃手だったといって護送に志願したクリスチャン・ベールは、何度か銃を構えて遠くに見えるラッセル・クロウの部下に照準を合わせるが撃たない。それは何か策があって撃つべき時でないと判断しているからで、後でその凄腕をみることができる。そう思って見ていたが結局その狙撃の腕が披露されることはなかった。多分あれは嘘だったのだ(狩りではよい腕を見せているけど)。


アクションもいいけれどこの映画は、馬鹿正直で融通が利かないクソ真面目なだけのダメな父親が、広く名の知れ渡った大悪党ウェイドの護送をすることで、息子からの尊敬を勝ち取っていく、という父と息子のお話なのだった。同じくダメだったらしい父を持ち子どもの頃に母にも捨てられたウェイドはエヴァンズの長男と自分を重ねて次第にエヴァンズ親子側に立ち位置がスライドしていく。


これが実に奇妙な味がして面白い。奪還しようと奔走する部下のほうも、エヴァンズと一緒に走って逃げるボスを見て微かな違和感をもったように見えた。この辺は、アクションの連続なので明確に読み取るのは難しい。ま、アクションでなくても、たとえばエヴァンズの妻とウェイドの会話では二人がその昔よその町で付き合っていたのかもしれない、というストーリーが仄めかされるけれど、明確な答えはないように見えるから、全体的にこれ!というカチカチな描き方を避けているだけなのかも。


最後はあまりにもあっけなくかつ意外な展開ですこし笑いそうになったけど、基本的に役者の演技がみんないいので、なんとなく説得された感じ。


ただあれだけ人を殺しまくってるんだから、もし本気で護送を止めようとするなら機関士を撃ち殺せば済むのに、なぜかそうしないNo.2がおかしい。いくら護送専用車両があるといっても特に武装した兵士や保安官が大勢いたわけでもないし。そこだけかな。


とにかく息子の父親は死ななければならない。かっこよく。男は黙って死ね。


追記:今日は実は『96時間』も見たのだった。明日書くけど。パンフ開いたそのページに佐藤哲也の名前がっ。先生、解説書いてるじゃん!