JUNO/ジュノ 【Juno】 Phuket, Thailand!

これを見た。





TVCMや映画館での宣伝を見ると、良さそうなのは分かっていてもなぜか萎えてしまい、避けて見てなかった。単館系で当たった、というと何となくどんなものかわかるし。


でもまぁ、そろそろ熱りも冷めたころだしいいや、と言うことで見たら、やっぱり良かった。天邪鬼は損だな。


素敵なソファの所為で親友とついやってしまい、つい妊娠してしまった高二のジュノが、高二なので自分たちでは育てられないといった程度の自覚はあったために堕胎を決心、とても話しにくいハンバーガー型の電話で連絡を取り、タダで処置してくれるというアレゲな女性支援クリニック“ウイメン・ナウ”へ行くと、なぜか同級生のスー・チンがたったひとりで堕胎反対のプラカードをあげながら「どんな赤ちゃんも生まれたがってる」と繰り返していて、二人は顔見知りなので言葉を交わしていると彼女から「お腹の赤ちゃんにはもう爪も生えてるんだよ」というようなことを聞かされてちょっと驚くが怯んでは居られない。そのままドカドカと突入し、さっさと終わらせようとしたが、周りのアレゲな妊婦たちが起こすさまざまな音(腕を掻く音、爪を磨く音、クリップボードを叩く音)に耐えかねて逃げだし、産むことを決意する。


とはいえ、育てられないことは分かっているので、たった一人と思しき同性の親友リアと相談した結果、タウン誌に載っていた養子募集の中で、飛び抜けて理想的な夫婦に預けることを決定して、ごにょごにょごにょ。


冒頭で大体のストーリーの予想がついていたが、赤ちゃんの父親である冴えないボーイフレンドや両親(継母)の態度、養子に出す先の“若くてリッチで健康的”という完璧な夫婦の細かな描き込みを見ているうちに、結末が分からなくなる。


ということで、それぞれのキャラの描き方や配置のバランスがいい。さらに画面がきれい。抑えた色味も変に冷たくも温かくもなく自然だし、いちいち構図が決まっているあたり、隅々まで神経が行き届いている感じでとてもいい。そういえば不思議なこともある。顔のアップがカットバックで映されるんだけどなぜかジュノの顔だけ雰囲気が違う。同じように撮っているはずなのに一人だけ望遠で撮ってるような、距離が遠いような感じがした。顔が小さいからなのか、顔の作りがなんか変なのか…


結末も、まぁ悪くない。


結構むちゃなことをやっている割に、ジュノのことが心配にならないのは両親がどっしり構えていてしかも優しいのが良く分かっているから。安定した家庭ってのがとても重要だと、フィクションを見て分かったりする。


実の父親がとてもいいキャラだし(あんなのいるのか?)、継母との関係は微妙にズレているところも描かれているけど決定的ではなくお互いに嫌ってはいないし、妊婦の先輩としての存在感もあって(これは養母候補に対しても同じ)、安心して見ていられる。実母が全く出てこないというのもブレない理由かも。


実父を演じているのがJ・K・シモンズで、つい先日『バーン・アフター・リーディング』で無神経なCIAの無神経な上司をやっていたのを見ている所為か、すっごいいい人に見えた。いろんな映画で脇役として見るけれどそういやいい役者なんだな、と初めて思った。