大蟻食、茫然とす

他の数枚は大学時代に友人に撮って貰ったものだそうで、撮る側撮られる側双方の若々しい気負いが印画紙に鮮やかに留められていた。




僕はひと月ほど前に、ほんの少しだけお目にかかった。そのときはまだ大部屋にいらしたがベッドの上で身体の向きを変えるのも一苦労といった様子で、具合は良くなさそうだった。まずい時に伺ってしまったと思った。にもかかわらず著書についての馬鹿な話にお付き合いくださり、小さな声ではあったけれど丁寧な返事を戴いた。あの時はありがとうございました。そのあとすぐに辞去したけれど、あの瞬間からずっと胸を離れないものがある。なんなのかはよく分からない。