ダーティーハリー 【Dirty Harry】

やっと見た。


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いやぁカッコいいな。音楽もいい。これ、普通に出来がいい映画だな。


町山さん(その節は八つ当たりしてごめんなさい)の言っていたとおり、ハリー・キャラハンは事あるごとにJesusと結びつけられている。最初のセリフは「Jesus!」だし、「JESUS SAVES」というネオンサインの下でスコルピオと銃撃戦になるし、丘の上の教会の巨大な十字架の元でスコルピオに半殺しにされる。


一方のスコルピオは話で聞いていたほどではなく、単なるキチガイに見えた。確かに一応サンフランシスコ市民を人質に20万ドルを要求しているけれど、それは口実で、ゲームを楽しんでいるように見えるけれどアメフトのスタジアムの住み込んでいる用務員室を見ると、ただ孤独で貧乏で希望がなく絶望した若者に見える。ということで、常に薄く感じられるものはあったけれど、それほど神性=悪魔性は感じなかった。


ただ、追い詰められたときの表情やナイフを刺されたときの顔はかなり気持ち悪いし、ハリーに殴られたと偽装するためだけに、ホームレスの黒人にお金を払って殴られにいったときの腫れあがった顔も相当イカレタ雰囲気を作っていた。


この二人の対決で一番ぐっときたのはアメフトのグラウンドのシーン。ナイフで刺され銃でも撃たれたスコルピオの左脚をハリーがぐぐぐっと体重を乗せて踏みにじるところで、踏みつけているハリーには強い風が吹きつけ、悪鬼・邪鬼を踏みつける不動明王のような四天王のような様相になっている。そこでカメラがすーっと上空へ下がり、スタジアム全体を俯瞰する。これはかなり凄い。画面が多少傾いているのもかなりいい(偶然だろうけど)。


スコルピオは左脚を44マグナムで撃たれてはいるし、話にでていたように撃たれた瞬間すんごく高く飛び跳ねているんだけど、傷を見るとかすったようにしか見えない。あとで出てくるシーンでビッコを引いているのは日が浅く、治りきっていないからだと思う。なぜなら、ナイフを刺した夜、スタジアムでスコルピオを撃った夜につけられたハリーの顔面の傷も治りきっていないからだ。


で、最後。「自分の銃には弾が残っているかどうかわからない。どうする、punk?」といって結局スコルピオの胸を打ち抜くんだけど、映画の最初の銀行強盗のシーンで一度やっているので、注意深く見ていればこのときはちゃんと数えられるようになっているのも良くできてんなぁと思う。撃ち殺したあと警察官のシンボルであるスターのバッジを捨てる。途中、署長から説教されたときに、「You want my star?」と聞いているので、この行為には当然辞職の意味があるんだろう(ただなぜPart2で復活しているのかはわからない。見なきゃだめか)。


スターと言えばこの映画、いっちばん最初に殉職した警官の碑が映されるんだけども、1800年代後半からずらーっと名前が並んでいる。で、そこにも大きなスターが埋め込まれていて、これが最後のシーンとなにか関係がありそうだとは思うんだけど、はっきりしない。やっぱり単に辞めた、ということなんだろうか。


ただねー。殉職者がずらっと並んでいたし、サンフランシスコ市警もちゃんと仕事をしていて、何度かスコルピオを抑えられそうになるとこまで行くし、そういう意味ではこの映画、結構警察に好意的に見えるけど、ついこの前『チェンジリング』を見たばかりだから、サンフランシスコだって汚職だのなんだの一杯あるんじゃないの?という思いもずっとあった。そういえば、bartのoakland駅で完全に身柄を抑えられた男を撃ち殺した警官のあれ、どうなったんだろ。町山さんちのすぐ近くだって言ってたけど続報聞かないなぁ。


ということで、この映画かなり良かった。なんだかこのままクリント・イーストウッドを制覇したい気分だけど『恐怖のメロディ』が見当たらない。どしよ。


10日追記:登場人物の背景をまったく描かずに神性・悪魔性を出す表現方法、ということでスティーブン・スピルバーグの『激突!』を思い出した。ただし、人影すら殆ど映っていなかった所為かあるいはその行為の程度の低さの所為か悪魔というよりは悪霊といった感じだった。軽め。