故あって新快速に乗る。

過疎地に入ってから乗客がぐっと減り、同時に出入口にある補助座席の使用が可能になったというアナウンス。

座席を引き出しすわる。ドアを挟んだ向かいには女性。私は進行方向に背を向けており、例え急ブレーキが掛ったとしても問題はない。

だがしかし。対面の女性はこちらへ向かって飛ばされて来るに違いない。うつ向き加減で静かに目を閉じ、その長い睫を存分に見せ付けているのは、若い乙女。
もし。彼女が飛ばされてきたら?どうしようか?

靴ぞこでもって強烈に拒絶するべきか?あるいは彼女の細い膝や肘をうまくかわしつつ、両手でやさしくソッと受け止めるべきか?

じぃと眺むれど、うつ向いていることもあってか、なかなかに微妙なその容姿のため、ウンウンと悩んでいるうちに、彼女は降りてしまった。

代わりにすわったのはデブのおっさんだった。今度は、右足は喉元から顎に、左足はその太鼓腹に蹴りこむことを瞬時に判断した。