ぜんぶ、フィデルのせい 【La Faute à Fidel!/Blame it on Fidel】

これを見た。


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アンナ、かわいー!


ふう。最初こそにこにこしているシーンもあったけれど、その後はずっとふくれっ面をしている。これがかわいいんだな。なんで?なんで?なんで?と、なんでを連発して両親や周りの大人たちを困らせ、答えを得たら得たで、その答えを文字通り、額面通り受け取って実行に移してさらに困らせる。困らせるといっても本人はいたって真面目で真剣であるから、ちゃんと説明できなかったり、その時間が取れない大人としては“生意気な!”という言葉に逃げるしかない。


図らずしてラディカルになる反動少女。無邪気にも見える両親たちの左翼的な社会運動。わからないこともないけれど、懐いていたお手伝いさんはいなくなってしまうし(このキューバから亡命してきたおばさんが、全部フィデルがわるいといっただけで、フランスでのアンナのイライラの原因がぜんぶカストロの所為になってしまう。カストロ涙目)、お金はなくなるし、学校では一人だけ宗教の授業から外されるし(あれは無いわ)、お家は狭くなって四六時中革命家気取りの小汚い髭面のおっさん(とはいっても20代かな)やらタバコ片手にサイケちっくでヘンな服を着て女性の権利を確立しようとしてるおばさんたちに囲まれて、子供にとっちゃいい迷惑。不機嫌になるのは仕方がない。


とはいっても、思いきり頑張った反抗も、ちいさな弟を連れて図書館へ家でするくらい。またこの弟がちょう無邪気でどんな環境の変化にもお姉ちゃんのように困惑したりしない。さらに両親が運動の所為で忙しくなったために、子供とのかかわりが薄くなってしまい(日曜日しないの?と、日曜日が動詞になってた。子供にとってはたのしい時間の過ごし方らしい)、アンナだけがひとり孤立した感じになってしまうあたりがとてもいい。


家では両親やその周りにいる運動家とするどく対立しつつも、徐々に影響を受けた結果学校でも浮いた存在になってしまってかなりキツイ状況に置かれるんだけども(ちょうどそのころ両親もきつい状況に陥って余裕を失っている)、ふくれっ面でなんとか乗り切るところがとてもいじらしい。


結局チリではクーデターによって軍事独裁政権が成立し、父親の運動は最悪のかたちで挫折する。TVのニュースでは民主的に選出されたアジェンデ大統領最後の声明が流れ、はっきりとは意味が分からないながらも何かを感じたアンナが、寂しそうな顔をした父親の手を握るところが、ものすごくいい。あれは弟にもお母さんにもおじいちゃんおばあちゃんにもできない。アンナにしかできない。