サラエボの花 【Grbavica】

これを見た。今回ざっと借りたなかで、なんとなく最後に見ることにしたんだけども、正解だった。


サラエボの花 [DVD]

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サラエボに暮らす母と娘、二人のお話。


なんと言えばいいのかわからない。表情の乏しい母と少し生意気なくらい生き生きとした娘。二人のキャスティングがいい。二人の演技がとてもいい。


ずっと見ていて途中で気がついた。音楽が掛かっていない。店でかかる歌やラジオから流れる音楽、テレビから聞こえる音声しかない。図らずも思い出したのが『あなたになら言える秘密のこと』だった。これが良かった。別にドキュメンタリー風の映画、というわけではないけれど、ドラマっぽさや俗っぽさを排除したかったのかもしれない。


特に説明はないけれど、状況は推測できる。修学旅行のために必要な200ユーロを必死に貯めようとする母親。父親がシャヒード(戦死者、殉教者)であるという話に疑いを持つ娘。失っていた表情。母が本当の意味での表情を取り戻す瞬間が、とても哀しい。


少年と少女が、学校をさぼって逃げ込んだ廃墟になったビルから見える高層ビルには見覚えがある。あそこも廃墟だ。銃弾、砲弾が撃ち込まれていた。それでもサラエボの街は美しいことに気がつく。緑がとても綺麗。廃墟と美しい緑が共存している街で、いろいろな人が生きている。集会の面々をよく見ると、冒頭では気がつかなかったけれど、ほんとにいろんな顔をしている。いまだに民族の坩堝であることが分かる。


とにかく、とてもよい映画でした。