コレラの時代の愛 【LOVE IN THE TIME OF CHOLERA】

死ぬ時のためにヒラリー・スワンクの『P.S.アイラヴユー』でも見ようと思っていたら『コレラの時代の愛』(音がでます)が始まったらしいのでそっちを見た。


なぜ見たかというともちろん、ハビエル・バルデムの顔が見えたから。隣に映ってる女性もきれいだし。と、適当な動機だったけれどこれがいろんな意味で大当たりでした。おもしれー、これ。


郵便局で働く青年というか少年フロレンティーノが電報を配達したラバ商人の家の一人娘フェルミーナに一目ぼれする。熱に浮かされたフロレンティーノは一晩かけてラブレターを書き、ミサで集まった教会で手渡すことに成功し、二人の間で手紙がやり取りされるようになる。そのうち庭に侵入してバイオリンを弾き二階の窓辺にたつフェルミーナにプロポーズをすると、フェルミーナは独り身のおばに「断ったら一生後悔するわよ、独身だけど愛には詳しいの」(かっこいー!)などと猛烈にプッシュされたこともあってその場で承諾する。


しかし、金持ちと結婚させようと必死な父親に反対される。ジョン・レグイザモはいい!粗野で教育がない馬喰(ラバだけど)がぴったりだ。それでも決心が揺るがない二人を見た父親は遠く離れたほとんどジャングルといっていいような山の中にある親戚の家へほとぼりが冷めるまで引っ越す。なぜほとぼりが変換できないのだ。


そこで1年ほど暮らしたあと、町に戻ってくるのだが、市場だろうか、繁華街の一角、代書屋が並ぶ通りで二人は再会を果たす。ここ!ここがすごいの。


なにがすごいってね、フロレンティーノが少年からいきなりバルデムに代わってるの。フェルミーナは同じ女優で相変わらず美しいにもかかわらず、フロレンティーノだけが30年も年をとったかのようにバルデムに代わっている。がんばって若造りしているけど、どうにも無理があります。これってSFだっけ?フェルミーナお嬢様は宇宙へ行ってたの?みたいな。


バルデム=フロレンティーノの顔を見ながら「うっわー…」と驚いていると、フェルミーナが言う。「たった今あなたを見てわかりました」と。え?なにが?と思っているとどうやらフロレンティーノは自分の相手としては相応しくないということらしい。一年前のあの盛り上がりは幻想だったと。つまりレグイザモ父さんの熱り(ほとぼり)冷却作戦が的中したのだった。


というか、どう見たってすんごい不細工になってるもん。それまで、すこし幼ささえ感じさせる笑顔を見せていた(若いころのヒース・レジャーのようだった)フロレンティーノがバルデムだもん。『ノーカントリー』だもん。アントン・シガーだぜ?


思わず吹き出したもん。もう少し少年役で通すか、せめてもう一人、あいだに挟めばよかったのに。ここで、映画の中の流れから引き離されてしまい、しばらくの間、どうなんこれ?なに?いいのか?分かってやってるんだろうか?などと余計なこと(おもに配役。というかバルデムについて)を考えざるを得なくなった。


ところが、少し話が進むと、監督はわかってやっていたのだ、これでいいのだ、少なくとも間違ったわけではないということがわかる。要するに、フロレンティーノという男をどうしようもなく気持ち悪い男にしたかったのだ。


で、バルデムじゃなかったフロレンティーノを振ったフェルミーナは病気にかかった時に診てくれた若くてかっこいい医者と結婚するのだった。これがまたいい男なのです。おれから見たってこっち選ぶぜ。というくらい。


その医師と順調に家庭を築く裏側で、フロレンティーノがどんどん気持ち悪い男になっていく。僕としては、あの再会して即振られたあの時点で、フロレンティーノがアメリカに渡りアントン・シガーに改名して屠殺用の空気銃でプシュップシュッと殺しまくる殺人マシーンとなったという展開のほうがよかったんじゃないかと思っていた。いまもちょっと思ってる。すごくうまく繋がるもん。


でもそうはならずに、とにかく手当たり次第女とやりまくってジェームス三木のようにその記録を付ける変質的なおっさんになってしまうのだった。で、映画の冒頭のシーンに戻ってくるんだけどもそこからが長かった。


でもいろいろあった挙句にああいう終わりを迎えるには必要な時間だったとは思います。


この映画、20世紀初頭の南米コロンビアの雰囲気がとても魅力的に描かれていて、実はそこが一番よかったりする。画面中どこを見ても本物のように見える。雑多な人種、民族、雑踏、あふれる人や物。緑も多く画面がとてもきれい。


あとおっぱいがいっぱいだった。主演のジョヴァンナ・メッツォジョルノという女優がきれい。デブラ・ウィンガーに似ている美女だった。そっくりに見えたけどデブラの記憶が薄くなっているのであまり自信ない。デブラ捜索が映画になるくらいだから世間的にも同じはずだ。マリオン・コティヤールにも似ているかもしれん。とにかく美女。