バートン・フィンク 【Barton Fink】
なんども寝てしまい、そのたびに戻しては再生しつつ、これを見た。
- 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
- 発売日: 2005/07/01
- メディア: DVD
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むう。面白い。『ビッグ・リボウスキ』よりずっと良かった(ジェフ・ブリッジスが嫌いだったってこともあるか)。
主役である脚本家バートン・フィンクはジョン・タトゥーロ。なのでいつブチ切れるだろうと心の準備をしていたんだけど、これがなかなか抑えた感じの渋い演技。というかそういう役なんだけど、それでもタトゥーロさんだし、と思って待ってたんだけど。
特に最初のあたりで隣室がうるさいってフロント(そういえばフロントはスティーブ・ブシェミだけどほとんど出番がなかったな)に電話したらなんか文句あっか?みたいにやってきた隣のデブの客チャーリーがいつものジョン・グッドマンで、この二人が対面してなにも起らぬはずがない、と身構えていたけどここでも何も起こらなかった。
ということで、特に何かが起こるわけではなく、脚本が書けずじわじわと追い詰められていくバートンの様子が続いていて、息苦しい。しかも暑さで壁紙がべろーんとはがれるほどらしく、つねに扇風機が回っている(今の時期に見てよかったのかもしれない)。融けだしたノリが気持ち悪いし。
で、脚本がまったく進まないまま次の朝に社長に報告しなければならないという、締切の緊張が最高潮に達したとき、いきなりどかんと事件が起こる。
目覚めてぎゃーと叫んだバートンの声を聞いてチャーリーが部屋にやってくる。その時はなんとも思わなかった。でも一人では対処できないと泣きついてきたバートンを助けて、NYに行くと言ったチャーリーを見て理解した。あとはそれをなぞるだけだった。
なぞるだけだったので、面白くないかというとそうではなかった。最後のシークエンスが素晴らしい。あれってノリが燃えやすかったということでいいんだろうか。という細かいことは置いておいて、オーブンのようになった廊下をショットガン片手に疾走するデブがすごい。この映画、タイプライターにずずずーっと寄っていったり、洗面台の排水口に寄っていったり、靴がならんだ廊下を寄ったり引いたり、もちろん人物の顔に対しても同じように前後の動きがある。これも息苦しさを増幅させているのかもしれない。
でも一番すごかったのが、この最後のシーンで、ベッドに手錠で固定されたバートンが部屋のなかからドア越しにみたチャーリーの姿。一瞬だけだけど、炎をバックにずんずんと進む姿が強烈。
出来上がった脚本を読んだワンマン社長の「魂との闘争なんて映画はつまらん」という言葉はバートンに向けられているんだけどコーエン兄弟自身がいつか言われた言葉じゃないのかなぁと思った。その回答がこの映画だったりして。