僕の村は戦場だった 【Иваново детство】
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- 出版社/メーカー: アイ・ヴィ・シー
- 発売日: 2006/03/24
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タルコフスキーということで見た。『惑星ソラリス』に比べるとずーっとわかりやすい映画だった。
大人だと見つかりやすいし逃げ出しにくいということで戦争孤児らしい少年が斥候としてドイツ軍の支配地域にもぐり込む。というか潜っていた少年が、大人でも渡るのが難しい河を渡って帰ってきたところからお話が始まる。
戦争映画だけど、これといった戦闘シーンはない。もっぱらソ連軍の塹壕と少年の記憶で話が進む。
8割がたは主人公の少年の魅力、あとはソ連軍の中尉や大尉、軍曹なんかのやり取り。衛生中尉だったか、女性も出てくるけれどあんま意味ない。たぶん。
少年イワンがどういういきさつで戦争孤児になったのかは描かれていない。ただひたすらに平和だったころ、幸せだったころの記憶、それはほとんど母親についての記憶、が描かれる。そのころの穏やかな笑顔と、斥候をやっていて、身を案じる上官によって後方(幼年学校)へと送り返されることをかたくなに拒否している現在の顔のギャップがおおきい。断絶がある分コントラストがきつい。
あとは、昔の記憶というよりは、それらを元にしたイワンの夢のような映像が印象的。仲のよかった少女とか砂浜をうろつく馬とか、ぱっと見ても意味がよくわからないシーンが印象的。
でも、最終盤あたりにナチが降伏したときの記録映像が出てくると、ノンフィクション映像のもつ強力な存在感が前面にでてしまう。具体的にはナチの幹部(ゲッベルス一家とか)とその家族の遺体の様子で、子供は服毒したのか眠ったような様子だったり、拳銃でみぞおちあたりを撃たれていたりする。親のほうは焼け焦げていたり首をつったりしている。これらの映像が威力があるのはノンフィクションだから、ではなくって、写っているのが実物の死体だからかもしれないけど。
で、この映画だけを見ているとソ連軍ってそんなに間抜けじゃないんじゃないの?と思ったけど、どうなんでしょう。ソ連映画だからでしょうか?士官あたりはなかなかちゃんとしているっぽかった。イワンも斥候で得た情報を植物の種だとか葉っぱに置き換えて持ち帰るあたり、ほえぇーっと思った。
そうそう。冒頭にイワンが空を飛ぶ妄想を描いたところがあるんだけど、どっかでみた気がしたのはボンダルチェクの『戦争と平和』と似ていたから。ソ連の映画って空撮が好きなんだろうか。
ウィキを見ると原題の意味は「イヴァンの子供時代」らしい。こっちのほうがいい。というより邦題だと意味が違う。「結果的には子供時代しかなかったイワン」の子供時代ということになる。ひょっとしたら孤児になり復讐の鬼になっていたイワンはもう子供ではなかったのかもしれないけれど。