ブレイブ・ワン 【THE BRAVE ONE】

半額だというのでビデオ屋さんに行った。“『エラゴン』だの『ダンジョンズアンドドラゴンズ』だの『バトルフィールド・アース』だの”がいいということなので、探してみたら『エラゴン』と『ダンジョンズなんとか』が見つかった。二作品並んでいたのだ。なぜ並んでいたのかというとどうやら同じファンタジー系であり、さらにはどちらにもドラゴンさんが登場し、さらにはさらにはどちらにも脇役としてジェレミー・アイアンズが出ていたのだ。そりゃ並ぶわ。


しかし。そのジャケットの絵を見て思い出した。どっちだかわからないけど、DVDの予告かTV放送かで見た記憶があった。なんだか塔の最上階に主要な登場人物が一同に会したところに大量の空飛ぶドラゴンが襲ってくる、そんな感じのシーンだったんだけども、あまりにアレな出来で「これはあかんわ…」と強く思ったのだった。ひょっとして噂にきく『デビルマン』に匹敵するのではないのか?とかそんな風に思った記憶がある。


しかしあっちの人たちはほんとにドラゴンが好きなのね。好きでいっぱい作っているのに、これといったドラゴン映画がないってのはどういうことなんでしょうか。誰かこれはいいドラゴン!という映画紹介してください。ちなみにデニス・クエイドショーン・コネリーだというので見た『ドラゴンハート』はダメです。


ということで、いくら半額とはいえ、そのようなものを借りる余裕はないのであきらめてこれを見た。


ブレイブ ワン [UMD]

ブレイブ ワン [UMD]




婚約者があっさりと死んでしまい、しかも二人の関係の深さを示す部分がないので、ジョディー・フォスターの動機に納得しづらい。だいたい刑事のテレンス・ハワードのほうがいい男だしな。『クラッシュ』でマット・ディロンに虐められてたプロデューサーやってたときも思ったけど、このひと目の色がきれいね。


話はとても簡単で、結婚する直前にチンピラに絡まれた揚句、彼らの機嫌が悪かったのか、ものすごく殴られて、男のほうが死んでしまって、生き残ったジョディーが退院してから9mmを持ち歩くようになって、街で出会ったチンピラの屑どもをバンバン殺しまくるという、ちょっと間違えばチャールズ・ブロンソンなんだけどやっぱりそこはジョディーなのでちょっとクラリスっぽく見えてにやけてしまう。そういうお話。


ま、あっさり死んでくれたおかげでこれといった愁嘆場というのがなく、ストーリーは簡単だし、ということで銃を持ったジョディー・フォスターを眺めるだけ、という暇つぶしにはちょうど良い映画。ジョディーに対する疑いを強くしたテレンスと昼ごはんを食べるシーンはよかった。なんか二人の役者の勝負って感じと、くっつきそうでくっつかない男と女というのが重なっていて、セリフもたいしたことないんだけど、胸がざわざわした。ちょっと泣きそうになってたかもしれない。


でも、これってさ。こないだの大蟻食先生の言ってた薄い脂肪の膜のしたでぐつぐつ煮えているぎゅうにゅうって話に通じるよねぇ。いろいろと。自分がいかに危ない世界と隣り合わせで暮らしていたのか、襲われて初めて実感して、世界の見え方はもちろん自分自身まで大きく変わってしまう。そして元には、二度と戻れない。


一点。一線を越えたジョディーに、同じアパートに住む黒人女性が軽く説教じみた話をするんだけども、彼女がスーダン難民という設定。どうも、これが気に入らない。そりゃジョディー以上に悲惨な体験をしていないと説得力がないというのはわかるけど、その設定の理由がそれだけってのがなぁ。ま、いいけど。