ブラディ・サンデー 【Bloody Sunday】

監督がポール・グリーングラスだと言うのでこれを見た。

ブラディ・サンデー スペシャル・エディション [DVD]

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いやぁ、パッケージにでかでかとこれでU2の『ブラッディー・サンデー』が出来ました!みたいなのが貼ってあってちょっと引いたけど、まあその線も興味がないわけではなかったのでいいんだけど、やっぱすこし恥ずかしい。


1972年、1月30日の北アイルランドのデリー市。いろいろと抑圧され権利を制限されているという少数派のカトリック教徒たちが、地元選出のイギリスの下院議員(プロテスタント)のアイバン・クーパーを先頭に大規模なデモ行進を行なおうとしていて、朝から騒がしい。


デモを企画し、実行しようとするクーパー側の様子と、このデモにおいてカトリックの過激な連中フーリガンを一斉逮捕しようと計画している英国政府=陸軍側の様子が交互に映し出される。薄暗い天候そのままのような薄暗い画面のなか、淡々と手持ちカメラによる少し揺れのある映像で描かれる両者の舞台裏。その画像と特に説明臭いところがない点によってドキュメンタリーを見ているような気分になっていく。


結果は既に分かっている。そこへ向かって、いつ、誰が、どうしたのか?という興味が、見ているうちにどんどん煮詰まっていく。これは『ユナイテッド93』と同じだけど、此方の方が数段面白い。


もし。もしこの映画の内容が正確であるとするならば。あれは単なる、一方的な虐殺だったことになる。規模と若者の馬鹿さ加減を見誤った公民権協会側のミスや現地の様子をまったく分かっていない本土から来た軍隊、いろいろ不幸が重なったとはいえ、あの軍隊はまったくなっていない。コントロールが効いていない。


そんなアホな、と思うほどむちゃくちゃであるにも関わらず、リアルに見える。あの引き金の軽さの一因は兵士や組織の質の低さであったことははっきりと描かれているが、もう一つ。此方は陽には描かれていないけれど、プロテスタント兵士が持つカトリック住民への蔑視があるように見えた。


チベット人を狙撃する人民解放軍を思い出した。トーガのような布を纏った僧侶の集団が情けない姿勢でうがぁー!と突入していく姿を笑ってしまったんだけども此方の方が規模も質も圧倒的に酷いことになっているんだろうと、この映画を見ながら思った。かなりヤバイだろうなと。


最初から死亡フラグがどどーんと立っていた青年はやはり予想通りの結末になったが、予想外に哀しかった。