ノーカントリー 【No Country for Old Men】

いつもより少し遅めに起きて電車に乗って二条までGo.TOHOシネマズ二条ってほんと二条駅の隣にあるのね。降りてすぐ。


ここは初めて。チケット販売のカウンターやポップコーンやグッズの売り場のあるロビーは普通だった。スクリーンはそこから一本長くのびた廊下の両側にずらーっと並んでいて結構壮観。その廊下の真ん中がアクリルになっていて下が見える。そこには白砂と竹だったかな、なんだかキルビルに出てきそうな似非っぽい日本風味。まぁいい。スクリーン8は座席数から予想していたよりはずっと大きなスクリーンだったので満足(となりに座った小太りのおっさんが臭かったのは残念だった)。


で、映画ですが。ほ、保安官後ろ!後ろ!アッー!という場面から始まり、アントンによる殺人が延々と続くのですが、なんだろうこの感じ。このアントン・シガーという殺し屋(なんだろうか。ただの殺人マニアだろうか)は高圧ガスの射出と巨大なサイレンサーをつけた銃(ショットガン?)を使い分けて殺しまくる。時には小銃も使うし冒頭のように素手でもやる。とにかくいとも簡単に殺す。殺す。殺す。


まったく躊躇なく殺すが、殺す対象者と話すこともある。ただその内容が異様、異常。異常といってもそれなりに筋が通っているらしく、それなりに意味もありそうなんだけども、怖い。ただ会話しているだけだけど、いつ殺してしまうのか分からないので物凄い圧力を感じる。ガススタンドのおっちゃんも、わけがわからないなりに怖がっていたし、狂人に対する恐怖というものはかなり動物的というか直感的なものなんだろう。ところでアントンと向き合って生き残ったのはこのおじさんだけだろう。会計士もルウェリン(ジョシュ・ブロリン)の妻も車で鶏を運んでいたおじさんも陽には描かれていないけど、どうみても殺されている。後半になると、もうシガーとあったやつは皆殺されて当然という感じになっていた。


一方、逃げる側のルウェリンもライフルの腕はともかく、ベトナム帰りということもあってか、メキシカンの相打ち現場から金を持って逃げた男の追跡の様子やシガーからの逃亡と対決の手際などを見ると、それなりに有能な男らしい。一度はシガーに手傷を負わせるくらいだし。で、そろそろこのルウェリンとアントンの最終対決か、というタイミングでルウェリンがメキシカンどもに殺されてしまう。これは明らかに観客(俺)にとっては予想を裏切る展開。暗黙のうちに期待していた展開とは違う。


じゃぁ登場して以来ずっといいところを突いていた老保安官ベル(トミー・リー・ジョーンズ)とアントンの対決か、と思っていたらこれまた意外な展開でアントンが退場することになる。


結局、事件としては何一つ解決しないまま犠牲者だけが増え続け(たかが水、されど末期の水)ばつん!と断ち切られるように終わる(ああ、『天使』のようだ)。これをどう考えろというのだろうか。


アントンはそのうち、冒頭で捕まったように逮捕されるか、ウッディ・ハレルソンのほかに雇ったという殺し屋どもに殺されるか、最後の傷が原因で死んでしまうだろう。あのまま永遠に殺し続けることはできない。で?捕まったとして、例の半分ほどは意味不明な問答を法廷で披露して、死刑執行されてお仕舞い。アントン自身も社会の方もどちらも納得できる何かを得られないまま終わるしかない。で?


ベルは映画のなかで何度か最近の事件は分からないと言っていた。14歳の少女を殺した少年は、誰でもいいから殺したかったといい、出所したらまた誰かを殺すという。この映画は1980年(1958年+22年)だけど、2008年の日本でも今日、誰でもいいから殺したかったといった24歳の男が蝦夷地で自首している。この手のキチガイ・気狂いはいつの時代にも居るはず。社会や制度はそういう連中にどう対処してきたのか、あるいは出来なかったのか。


色々読んで見ると、ラストのカウンセリングのような(ような、というかカウンセリングそのものかもしれん。老ベルはアントンの一連の事件に適切に対処−適切とは対症療法的な意味で−しながらも深く傷ついていたのかもしれない)あの夢の告白は希望を示しているという。正直、あそこで終わるとは思っておらず、時間も経っていたのでちょっと眠くなっていたし、気が抜けてました。なもんでよく覚えていません。僕にとっては非常に怖い終わり方で、エンドクレジットの間じゅう怖がってました。原作未読。原題にはFor Old Menと付いてます。これはトミー・リー・ジョーンズが代表していることになってるんでしょう。ずっと適切に的確に対処していたし、見ていて安心感があり、最後はちゃんと解決してくれるんじゃないかと期待していたので(鈍いですか、そうですか)、余計にあの夢の告白が怖く聞こえました。やっぱり俺も脳味噌が爺になってんだろうか。


そういえば。思い出した。アントンって

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これに出てくる桜という男に似ている。どっちかというとアントンの方が迷いを感じる分人間っぽい。


よくわからないままですがここまで。アントンとルウェリンがともにブーツに拘っていたり、二人とも傷を隠すために通行人からシャツや上着を買い取ったりとその行動が微妙に重なっているのにはなにか意味があるんでしょうか。わからん。二人とも伏兵(俺から見て)にやられてしまうというのも同じ。なるようにしかならん、あるようにしかありうべからずということでしょうか。悟れとな?


重厚な逃亡者だったルウェリンが下着とブーツだけで店に入るところやベル保安官のマヌケな部下(ベルの絶望を後押ししてるな、絶対)では笑ったけど、なんだかなぁ。これはダメージを快復させるだけのモノなりイベント(いいよな、蝦夷の党員は!)なりを用意しておくべきだった。正直しんどい。


で、あの高圧ガスのアレですが。イノシシの屠殺の仕事をしたときに見たことがあります。僕が見たのは完全に銃の格好をしていました。銃身が500mlの缶を少し細くしたくらいの大きさでガスの高圧を使って鋲を打ち込みます。


罠で捕らえた野生のイノシシ十数等が入った大きな檻から、一頭用のちいさな檻へ誘導します。一頭用とは言っても余裕があるので物凄く暴れる。その個体用の檻の隙間からイノシシの両の肩を押さえ込むように丸太ん棒を2本つっこんで固定した上で、ガス銃を眉間に付き付け、鋲を撃ち込むとバシュッ!という音がしてイノシシはガクッと膝を折り曲げます。同時に口と鼻から血のようなものが流れ出します。血のようなというのはただの血ではなく、なにやらぬるぬるした粘膜と混ざったような粘性の高い赤い液体だから。


そこで檻から出して解体します。大抵は殆ど即死。一部、当たり所が悪いのか、体力が強いのか、打ちこんで檻から出した後も数分間、横倒しになったまま四肢を猛然と蹴り続ける猛者がいます。あまりにも勢い良く蹴るのでこの脚に当たると怪我するんじゃないかと思うくらい。必死で走って逃げているつもりなのかもしれないけど、そのうち目から光が消えて動かなくなります。


解体はスバヤク、一部のこぎりなど使いつつ、胸を開き(養殖ものだと、解体するとすぐに脂が溶け始めるらしいので、なお更スバヤクやって早く冷凍しなければいけません)、内臓をごっそり抜き取ります。袋を破ってしまうと汚れて臭くなるので、きれーさっぱりごっそり抜き取ります。抜き取った内臓を放り投げるので腸の部分が破け、中が見えることがありました。餌(捕獲してから解体するまでにやる)から徐々にウンコに変わって行ってるのがひと目でわかるいい標本でした。


っと、話が逸れた。あの屠殺用のエアガンは凄い殺傷能力があって(そもそも殺すためだし)、拳銃その他の銃となんら変わりありません。見た目もおもちゃのようなぶっとい拳銃そのものです。アントンがわざわざあんな大型のボンベタイプを使っていたのは武器だと悟られないためだったのかもしれません。映画的に、ということかもしれませんが。ただ一点気になるのが、鋲を使っていないっぽいところ。ガスだけでああなるんでしょうか。無理っぽい気がしますが。



おまけ:ということで、少々気が重くなった僕は、反対に軽くなった胃袋を満たすために烏丸御池まで地下鉄で移動。予定どおりうどんを食った。





あーうまかったなぁうどん。庶民の味方うどん。などとお腹をさすりつつ北大路まで徒歩で移動。さすがに疲れた。でもって目的のモノを探したが見つからず。本日2度目の傷心を抱えつつバスで移動。


四条あたりでブラスバンドの行進に出くわす。そういえばお昼すぎに市庁前でなんか沢山人が集まって演奏していた。あのブラスバンドの音を歩きながら聞いて妄想していたんだった。“ああ、これはこの街のどこかで暗殺者が狙撃の準備をしているところだな、そして警察が犯人に迫っているんだろうな、あ、ちょっとまて。警察って京都府警だし無理だな。エライ人は殺されてしまうんだろうな。ざまぁw”みたいな。ブラスバンド=暗殺という、スッカリC級の映画脳になっていることに気がついたのだった。


で、そのパレードだけどえがったぁ。女子高校生いっぱい。衣装がとってもエロ(ry… 奈良大和郡山高校の女子高校生がよかったなぁ。その後の京都橘高校もミニスカートがステキだった。


ということで本日初の癒しを得た僕は機嫌よく帰途に。今日はこれで終了かと思っていたら電車でものすごい美女を見た。見た、というか向かいに座っていた。すっげぇ綺麗な女性。おとなの女性。久しぶりに見たほんものの美女。いい。あれはいい。


とにやけていたら途中でぶっさいくなおばはんが間に立ちやがったので、延々とどけ!どけ!どかぬなら死んでしまえ!と念を送り続けたけどどいてくれず、延々と遮り続けた。新祝園あたりで降りてくれたので助かったけど。


障害は消えたけども時すでに遅し。件の美女はうつむいて眠ってしまっていた。ぐぬぬぬぬ。おのれあのばばぁめ。と思っていたら目を覚ました様子。うはぁ、寝起きの顔かわいい。やべぇ。ちょっと不機嫌そうなのにへの字口になりそこねたちっさい唇がかわええ。とても形のいいきれいな目をゴシゴシするのも非常にかわいい。やべぇ。


そのうち組んでいた両手の指で、なにやら遊び始めた。ひとさし指同士を伸ばしてくっ付ける。あ、それはしょうがくせいがよくやるカンチョーの体勢じゃないですか、美女がなんてことを!と思っていたらあわせた人差し指の先をクネクネと蛇のようにくねらせ、体操みたいなことを始めたので思わずワロタら見つかってしまった。が!その時その美女は軽くニコリと微笑んでくれた(ような気がした)。


という皺と皺をあわせてしあわせ♪な時間もあっという間に過ぎ去り大和西大寺。美女が降りてしまった。次にあったら御飯に誘うぞ。お寿司でも焼肉でもフレンチでも中華でもイタリアンでも精進でも餃子の王将でもなんでも奢らせていただきます。どうぞよろしくお願い申しあげます。


でもなぁ。あの美女これ読んでなにか書き込んでたし。




だめじゃん。観光客じゃんか。


もうだめぽ