梅、うめ、ウメ、ウメェ、ウメー!

東京では桜が咲き始めたというのに、いつもどおり空気も読まず満開の梅を見てキタ。


今日はよくがんばった。いつもより早い時間に起きて電車のって近鉄奈良駅まで行く。ちょっと待って鹿のマークの路線バスに乗って一路東へ。ひたすらに、ただひたすらに山の中へと入っていく。ローだかセカンドの低いギアで、いかにも「わて重労働しとります、がんばっとります!」といった重くて低い、つまりは重低音を響かせながら−−時折後続車に道をゆずりつつ−−山道を登っていくこと約80分。よくもまぁこんなところに集落があるもんだ、という光景を幾つか通り過ぎてようやく目的地、月ヶ瀬村(奈良市だってさ、ここも!)の尾山停留所に到着。





帰りの時刻を確認…





ちょーーwwキタコレなにこれ!“15:21”しかねぇ!乗り過ごしたらお仕舞いって、なんて酷い罠なんだ。

覚悟を決めてアタック開始。





昇り始めるとすぐに梅。





と、右手になにやら賑やかな場所が。





看板には『松浦盆梅センター』とあり、右下には地鶏すきだのうどんだのぼたん鍋だのがセンターの名に負けないほどの堂々たる書体で書かれているが気にしない。僕は梅を見に来たのだ。梅を見る。





万作…まんさく?花を見る。





ちいさな深紅の花弁からちょろちょろと黄色い触手のようなものが生えている。気持ち悪い。いきなり梅の奥深さを突きつけられた思いがした。

そのお隣には黄梅。





イソギンチャクとは打って変わってかわいらしい花がたくさんぶら下っている。なんとなくクルクルさんっぽいイメエジ。青なら当確だったんだけど。


センターの中に入ると盆梅だらけ。いずれも満開なので猪木っぽい。





面目躍如。というべきか、さすがセンターと名乗るだけのことはあるな。このセンターではお土産も売っていて、そのなかにはいかにも自家製です!みたいな飾り気のないそっけないビンに詰められた「はちみつ」があったので欣喜雀躍小躍りしながら財布に手をのばした。伸ばしながら何気なく裏を見て奈落の底へ落っこちた。そこには『原産国:アルゼンチン』と書かれていた。あやうくそのビンを投げつけそうになったが我慢した。ぼく偉い。


しかし不思議だ。なにを思ってわざわざちきゅうの裏側から運んできたはちみつを日本のこんな山の奥の奥で、しかもさも自家製ですといった装いで売っているのだろう。ふしぎだ。と思いつつ隣においてあったおみやげ物を買った。さすがにはちみつは買わないけど、原産地なんてもうどうでもいい。中国産でなければいいやと漬物を買った。まだ食べてない。


かるく傷心した僕はトボトボ歩いてさらに登る。途中こんにゃくを食う。これも自家製だったけどもう気にしない。今年からはじめたというゆず味噌(昨年までは味噌と辛子のみだったそうだ)を塗って食う。熱い。うまい。


腹ごしらえをしてさらにトボトボと登ると、お寺が見えてきた。入ってすぐのところに立派な、それはそれは立派なしだれ白梅が。白滝ナントカと書いてあった気がするが忘れてしまった。





うーむ。あの圧倒感がないな。梅の写真は難しい。難しい、コイツは難しいとムニャムニャ云いながらさらに進むとそこには…





半鐘が!云い忘れておりましたが、かつての私は無類の半鐘好きでございました。何を血迷ったのか各地の消防団の半鐘の写真を撮り貯めておった時期もありました。そのときの記憶がよみがえった次第でございます。フラッシュバック?…ともかく梅。





めでたくも紅白の梅ではさんでみました。ほんとは下に収穫されずに立ち腐れた、たいそう見苦しい白菜の残骸が数本あったのですが写してません。


真福寺本堂の脇に『姫若の梅』というのがあった。





説明によると。その昔、というか大昔、後醍醐天皇笠置山へお逃げあそばされた(なんということか、天皇なのに!)ときに、この地でお倒れ(なんということか、天皇なのに!)になり、それを村人が救ったというので姫が感激して梅を植えてさらには烏梅という染料の作り方までお教えくださったという。それが村民一億総梅!梅!の始まりとなったという。これが植樹祭の起源やもしれぬ。


その姫若さんの隣をすり抜けて斜面にでると、そこには清く正しい村民が植え育てたたいそう立派な梅林があった。





梅だらけ。とそこになにやら凄そうなもの発見。





レトロっぽい蛇腹の大判カメラ。撮影風景も格好いい。





メタ。というのだろうか。言っていいの?誰か教えて。

いったいどんな写真を撮ろうとされておるのかと、忍び足でそっと後ろへ回り込んだ俺。





おお!どこかのポスターで見た記憶があるぞ。あれはここから撮ったものであったのか。と感心して自分で撮影するのを忘れた俺、バカバカバカ!俺のばか!





低い梅の枝で出来たトンネルをくぐりさらに進む。その後あんなとこやこんなことを歩き回った。

途中で見つけたおもしろいの。





幹からいきなり花。拡大してみるとバラのよう。桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿。ほんとどこからでも生えてくるらしい。



その後も強い日差しに照り付けられながらもてくてくテクテク歩き回った挙句とうとう日射にやられた僕は、最終の、最期の、最初の、あれ?ここはどこ?という混乱した頭のまま約束の地へ到着。





梅の谷。なだらかに広がり、緩やかに下る細長い盆地のような場所。これが桃なら桃源郷かというような。

梅は花がまばらにしか咲かないけども桜と違っていいにおいがする。そよ風が吹くとふわぁっと香るなんともいえぬ品のいい匂い。





これが一番人気のあったしだれ梅。皆さん次から次へと記念写真を撮っていた。全体の姿もなかなか素晴らしい。背景の電柱と電線が少々鬱陶しかったけども。

花に寄ってみた。





さらに寄ってみた。





舌の根も乾かぬうちに。ですが、こいつは桜と比べても遜色ない花密度。これでよい香りがするのだからたまりまへんなぁ。


ということで、スッカリ梅派になりました。もう桜はいいや。なにせ今日から僕は梅オーナーだもの。世話をしなけりゃならないもの。





いやぁ重かった。『梅香』というお店(というか普通の家だったけどなぁ)で梅中というおじさんから買ってしまった。うはははは。今は後悔している。だが生き物。世話はしてやんよ、うめたん。ほんとアホだな、わし。