アポカリプト 【APOCALYPTO】

新作枠から外れた、というのでこれを見た。

アポカリプト [DVD]

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なんだかプレデターのようなジャケット写真だ。と、常々思っていたが、実際中身もプレデターのようなものだった。


ジャングルで狩りをしながら平和に暮らしていた集落が突然、武装した集団に襲われ、生け捕りにされた人々は一本の竹に5人ほどずつ首をつながれて連れ去られてしまう。連れて行かれた先はピラミッドが乱立した都市国家で、拉致されたジャングルの住人たちとは比べ物にならないほど文明が発達している反面(というかその所為で)、農作物は枯れ、人々の間では病が流行り、貨幣をめぐって浅ましく争う、という荒んだ状況であったが、その荒廃した人心の不満の矛先をかわすためか、太陽神に生贄を捧げる儀式を連発していた。ということで、巨大な文明の力を背景に、周辺のジャングルから生贄候補をどんどん調達してきてどんどん殺しまくっていた国家だったが、そんな強大な文明にも終わりの時は近づいていた。といった風なお話。


2時間超の時間のなかで実際やっていることは殆ど鬼ごっこであったにも関わらず、まったく飽きなかった。というのはなかなか凄いことのように思えるんだけど、どこがよかったのかわからん。ジャングルの住民の様子がすこし現代人に近すぎるような気もするけど、あまり資料が残ってないっぽいので仕方ないのかもしれない。都市国家の王族や神官あたりにも同様のことが言える。まぁこっちはどちらかと言うと悪役としての紋切り型が目だったというべきかもしれん。主役のジャガー・パウとその妻は、それなりに美男美女であり、例の“二枚目=ナイスなヤツ”という大蟻食先生のお言葉の典型のような単純な造形。


とはいえ、一言でいうと腐った、というのが相応しい都市国家の様子はそこそこ面白かった。あの奴隷を使って作らせていた白い粉は、どうやら漆喰らしい。生贄の死体の山とか、使わなかった生贄を処理する人間狩りゲームとか。もちろんジャングルでの鬼ごっこも楽しい。滝つぼに落ち損ねて岩に頭をぶつけるところとか、期待通りの映像だし。


とはいえ、やっぱりダメな気もする。天然痘だかなんだか分からない流行病に冒された少女が口にする予言とジャガー・パウのその後の展開があまりにそのままだし、深い矢傷を受けたのにいつの間にか完治しているかのような、アスリートのような動きになっていたりするし。


とはいえ、じゃあどんな展開だったら気に入ったのかと考えても答えが出ない。うーむ。あれでいいのか?


ま、冒頭のイノシシのように突進するバクが気に入ったのでいいです、これで。実際に殺さないためだろうと思うんだけど、バクは精巧な人形作ってるのに、その後捌いている肉(ブタ?)は本物らしいし、プチプチと頭をちぎったありんこは本物って言うあたりがメリケンらしくて面白かったです。同じ黙示録でも巨大な牛さんの首をスパーっと斬りおとした『地獄の黙示録』とはエライ違いだ。あ、そうか、メル・ギブソンの趣味かもしれんね、バクのお人形は。


そうそう、だいじなことを忘れていた。生贄はお腹をぶすーと刺されて、その傷口に手をぐいっとつっこまれて心臓を抜かれてその上で首をちょん切られる。最後の生贄のひとが石の台に仰向けに載せられたシーンで、王様やらぶくぶくに太った腐れ王子(ガキ)のニヤついた顔やらを逆さまに見ている。で、そのまま首を切られるんだけど、次の瞬間画面がクルクル周り、あっちこっちが一瞬にして映し出される。あれってさぁ、斬りおとされた首というか頭がまだ生きていて意識があるってことでしょ?えぐいなぁって思いました。そういやなんかギロチンで首を落とされた人が瞬きして意識のある時間を知らせたっていうおフランスの話があったけど。